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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「採算為替レート=適正為替レート」という錯覚

円安否定論者が「今の円相場は割高ではない」と主張する際に、その証拠としてよく使われるのが、企業の採算為替レートです。現在の為替レートで企業の輸出採算がとれているのであれば、それは現在の為替レートが割高ではないことの証明、というロジックです。

下の記事がその典型例で、日銀短観では日本の輸出企業の想定円レートは約79円である。もうそれを10円も上回っている。100円を要求する業界があるが、むさぼりではないか。」と主張しています。 

しかしこれは、マクロとミクロの因果関係を取り違えた完全な誤りです。

企業にとって、為替レートはコントロール不能の「与えられる」ものであり、それが適正水準であるか否かにかかわらず対応しなければなりません。具体的には、

  1. 現在の為替レートを参考に将来の為替レートを想定する→
  2. 想定為替レートで採算がとれる製品ととれない製品を選別する(とれない製品は生産停止または海外生産シフト)
  3. 想定為替レートで採算がとれる生産が残る(結果として採算為替レートが決まる

現在の為替レート→将来の想定為替レート→採算為替レート、という決定プロセスから、採算為替レートを決めるのが経済ファンダメンタルズではなく、現在の為替レートであることが分かるでしょう。 グラフもこのことを示しています。アベノミクス始動前の採算為替レートが1ドル=80円程度だったのは、1ドル=80円時代が続いたため、企業が「1ドル=80円時代が続きそうだ」と想定するようになっていたからであり、経済ファンダメンタルズとは無関係です。

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アベノミクスが奏功して、仮に「1ドル=100円時代が続く」と企業が予想するようになれば、想定為替レートと採算為替レートも1ドル=100円程度への円安に向かうはずですが、これが日本企業の弱体化を意味しないことは言うまでもありません。1ドル=80円では採算がとれないが、1ドル=100円なら採算がとれる製品の国内生産が始まるだけです。

それにしても、経済に関する誤謬の種は尽きないようです。