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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「円安=近隣窮乏化」の嘘

円安否定論者の根拠の一つに、「円安は外国経済に打撃を与える近隣窮乏化策である」 というものがあります。円安になればグローバル市場において日本製品の価格競争力が高まるため、競合分野の多い国の輸出にマイナスの影響が出ることは確かです。しかし、だからといって「円安=悪」と決めつけるのは短絡的です。

為替レート減価の外国への影響は、為替レートが適正水準に比べて割高か割安かによって異なります。

①適正水準にある為替レートを割安な水準に誘導する

②割高な為替レートを適正水準に誘導する

①は内需・国内向け生産よりも、外需・外国向け生産を優先・促進するもので、競合する外国の輸出を減らすだけでなく、自国の消費者にも物価高のマイナスをもたらします(輸入インフレ+国内向け生産が抑制されることによるインフレ)。一部の輸出セクターが潤うダンピングもどきの政策であり、この場合は近隣窮乏化という言葉が当てはまります。典型が近年の韓国で、さらに大規模に行っているのが1994年に対ドル為替レートを33%切り下げた中国です。両国によって最大の被害を蒙った国はもちろん日本です。

②は「景気悪化→為替レート減価→輸出増加→景気回復」という経済を自然にバランスさせるメカニズムに沿ったものです。このメカニズムの発動が妨げられると、バブル崩壊等で不況に陥った国はなかなか景気後退・停滞から脱け出せなくなるため、世界経済全体にとっては明らかに損失になります(関係記事)。これを否定すると、不況に陥った国が不況のままであり続けることが自国にとってプラス、というおかしなことになってしまいます。

最近のユーロ圏について考えてみます。ギリシャとスペインの失業率は大恐慌時のアメリカに匹敵する26%に達していますが、ユーロ安が両国にとっては不十分なため、輸出増加→景気回復を果たせず、泥沼で喘ぎ続けることを余儀なくされています。ドイツにとっては、両国がユーロにとどまれば両国に対する輸出競争力は維持できますが、ユーロ圏に「爆弾」を抱え続けることになります。一方、両国がユーロから離脱して新通貨を3割程度減価させれば、両国に対する輸出競争力は低下するものの、EU経済は安定します。EU経済全体の繁栄という「大事」に比べれば、目先の輸出競争力などは「小事」に過ぎないことは明らかでしょう。

アメリカをもう一つの例に挙げます。第二次大戦後、ドルが大きく減価する局面は3つありました。

  1. 固定相場制から1973年の変動相場制への移行局面(日本とヨーロッパのキャッチアップを反映)
  2. 1985年のプラザ合意後(高金利政策が招いた資金流入・ドル高の是正)
  3. インターネットバブル崩壊後(アメリカの成長力が加速して他国を引き離したという幻想に基づくドル高の終わり)

1.と2.の局面におけるドル安には、過度のドル高によって変調を来したアメリカ経済だけでなく、世界経済のバランス回復が意図されていました。ドル高が継続していれば、アメリカ経済が大不況に突入し、世界経済に悪影響を及ぼした可能性が高かったためです。経済政策は、輸出の勝ち負けという小事ではなく、経済全体のバランスという大事を考慮しなければなりません。

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アベノミクス開始前の円為替レートが適正水準よりも割高だったのであれば、円安によって日本経済が復活することこそ世界経済にとっての大事であり、韓国の輸出企業への打撃などは小事に過ぎません。プラザ合意後の日本やヨーロッパ諸国が金融緩和や財政出動でドル安のマイナス効果を相殺したように、韓国が内需刺激策を実施すればよいだけのことです。 

日本は長期間にわたる円の過大評価と中韓による近隣窮乏化策によって甚大な経済損失を蒙ってきたというのに、この期に及んでなお、外国を気にする人が多いというのは異常としか言いようがありません(DV被害者心理?)。自国のことよりも外国のことを気に掛けるという日本人特有のメンタリティこそ、日本だけが長期のデフレから脱け出せないことの根本原因だということにいい加減気が付いてもらいたいものです。

 

参考:ゼロ・インフレ下の金融政策について― 金融政策への疑問・批判にどう答えるか―日本銀行金融研究所) からメルツァーのコメントを抜粋

  • 近隣諸国や貿易相手国に大きなコストがかかるとして為替レートの減価に反対する人々は、日本のデフレーションもまた日本の貿易相手国や近隣諸国、そして日本国民にとってコストが大きいことを認識するべきである。
  • 日本が成長すればアジアの経済的繁栄の回復を促し、世界経済の成長に貢献するであろう。
  • 一時的な通貨の減価といった短期的なコストにばかり気をとられ、近年のデフレ的政策を続けることで、長期の利益を先送りしてしまうことは間違いである。