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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

医療費が増える理由①:エンゲルの裏法則

家計の所得水準が高いほど消費支出に占める食料費の割合(エンゲル係数)は低くなる、というエンゲルの法則はよく知られています。しかし、逆に消費支出に占める割合が高くなる費目が何かについてはほとんど知られていないようです。

エンゲルの法則が成り立つのは、所得水準が2倍になっても食べる量は2倍にはならないからです。所得増加によって欲求が満たされやすい費目ほど、消費支出に占める割合は低くなっていきます。

このことから、所得水準が高くなるほど消費支出に占める割合が高まる費目とは、欲求が満たされにくいものであることが分かります。古くは不老不死を求めた秦の始皇帝、最近ではアンチエイジングブームが示すように、人類が追い求める永遠の欲求とは健康長寿(その極限が不老不死)です。そのため、所得水準が高くなるほどヘルスケアへの支出割合が高くなるのです(私は勝手に「エンゲルの裏法則」と呼んでいます)。過去半世紀のアメリカの個人消費統計からは、実質可処分所得の増加に伴ってエンゲル係数が低下し、その低下分を埋めるようにヘルスケア(主に医療)への支出割合が増大していることが鮮明に見て取れます(両項目の合計は約23%で安定)。 

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エンゲルの裏法則は医療費について論じる際に欠かせません。日本の医療制度改革では医療費の対GDP比の上昇を抑え込むことが目標とされていましたが、そのためには、

  • 日本の経済成長を止める
  • 健康長寿への欲求を無理やり別の欲求に切り替えさせる

のどちらかが必要となってしまいます。どちらも政策目標としてふさわしくないことは明らかです。経済の摂理に反する目標設定が、医療制度改革を誤った方向に導いてきたことへの反省が必要でしょう。