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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

米金融業界の荒稼ぎは正当か

2つ前の記事「HBSのクリステンセン教授がMBAビジネスの終わりの始まりを予言」では、MBAブームの背景に、投資銀行等の高報酬があったことを説明しました。

その高報酬の程度ですが、1人当たり報酬額をその他の国内産業平均と比べると、1980年代以降の高騰ぶりが目立ちます。金融業界でも特に高報酬の業種(≒投資銀行)の場合、1950~1979年の30年間の平均は1.67倍でしたが、21世紀に入ると4倍程度まで上昇しています*1。他産業の平均年収が600万円のところ、昔は1000万円だったものが、2500万円程度まで高騰したようなものです。MBAにぴったりのマネジメント業*2も2倍の報酬を得ています。

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この高報酬が、投資銀行で働く人々が作り出した価値の大きさを反映したものなら問題はないのですが、下のリンク先記事は問題が大ありであることを論証しています。

リンク先記事中、1つ目のグラフは金融業界の高賃金化と高学歴化、2つ目のグラフは高賃金化と金融規制緩和が連動していることを示しています。規制緩和によって、サブプライムローンなど複雑なデリバティブ商品を作り出すなどの「創造性」の価値が高まり、その「創造性」を身に着けるために高学歴化が進んだ、という流れです。高学歴化がある程度は高賃金化を正当化するにせよ、市場価値よりも4割程度高い、とPhilipponは結論しています。上のグラフに当てはめると、4倍は過大で2倍で十分ということになるでしょう。

この金融業界の超過利潤の源泉は、「信用(≒マネー)を創造する」という錬金術的な特殊な力です。この力が解放され過ぎるとバブルが発生し、その後の崩壊が実体経済に甚大な悪影響を及ぼします(1929年の大恐慌と2008年のリーマンショック世界金融危機)。そのため、力が解放されないように厳しい金融規制がかけられていたのですが、大恐慌の記憶が薄れた1970年代以降に規制緩和が進められ、実体経済に有害な結末をもたらす「創造性」が発揮されてしまったわけです。このような「創造性」に高報酬で報いる価値がないことは明らかでしょう。

金融規制緩和は、二つの経路で人材の効率的な社会配分を歪めたことも問題です。

  1. 金融業界の高報酬→有能な人材が金融業界に集中する→他産業の人材不足
  2. 金融業界の高報酬→学位インフレ→無駄な教育投資(関連記事

高学歴人材が「創造」したバブルマネーが、金融業界とビジネススクールの超過利潤の正体だったと言うことでしょう。

*1:1998年以降の業種分類では、"Securities, commodity contracts, and investments"と"Management of companies and enterprises"以外の国内産業計との比較

*2:onsists of offices of bank and other holding companies and of corporate, subsidiary, and regional managing offices.