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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

FTのアベノミクス批判記事の検証

アベノミクス

典型的なアベノミクス批判記事を検証します。

政府の政策課題は概ね、過去にうまくいかなかった手っ取り早い対策から成り、長年の低成長ないしマイナス成長を経た今では、従来以上に危険な対策だからだ。

アベノミクスとは、「過去にある程度成果を上げた」政策に、不十分だった政策(後述)を補完するものです。2012年の名目GDPは476兆円で、1997年のピークの523兆円から9%も減少していますが、2003~07年には年平均+0.7%で4年連続増加しました。これは、2003年1月14日に財務官に就任した溝口善兵衛(前任者は次期日銀総裁候補の黒田東彦)が、翌日から1年2か月間で35兆円強の円売り介入を実施し、日銀もこれに呼応して量的緩和を拡大させたことによるものです。1ドル=100円割れを狙った投機的な円高が阻止され、2005年から07年にかけて円高是正が進んだため、輸出主導の景気拡大が実現しました。逆に、2007年後半からの円高を放置したことが名目GDPの急減につながりました。

アベノミクスで円高是正が重要視されているのは、この失敗経験を踏まえてのことと思われます。

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いくつかの面では、安い円は確かに日本の輸出企業の収益に貢献する。だが、そうした効果はある意味で人為的だ。むしろ、より魅力的な製品を作り、価格決定力を持つ方が望ましいだろう。

魅力的な製品を作っても、過度の円高のために競争力が損なわれていることが問題です。輸出企業の収益改善には、魅力的な製品を作ることと円安の両方が必要なのです。片方が必要だからと言って、それで十分というのは論理のすり替えです。

携帯電話世界トップシェアのサムスン(韓国)とその前のトップのノキアフィンランド)の急成長は、両国の為替レートの大幅減価に支えられていたことを無視してはいけません。

円安により、貿易収支と経常収支の双方に大きな圧力がかかる。

これはJカーブ効果と呼ばれるもので、短期的には事実です。大きく円安に振れても、数量調整(輸出増・輸入減)には時間がかかるため、当初は輸入額増加による貿易収支悪化が生じます。しかし、数量調整が完了すれば貿易収支は当初よりも改善します。

一時的な貿易収支悪化を、長期的・構造的であるかのようにミスリードする記述です。

もし政府が望んでいるように円安進行が続いたら、外国人投資家は為替サイドのリスクを補うために、高いリターンを求めるようになる。

円安によって名目成長率が回復すれば、株をはじめとした資産価格の上昇が見込めるため、外国人投資家の高いリターンの要求は満たされます。実際、TOPIXは2003年安値から2007年高値まで2倍以上になっていました。

金利の上昇は、政府にとっても、過度な借り入れを行っている日本企業にとっても問題になる。後者のような企業が、新政権の政策に納得していない例の投資家の標的だ。

日本企業は1990年代後半から負債圧縮を続けており、純負債(=負債-金融資産)は1970年代の水準まで激減しています。つまり、全体としては借入が少なすぎる(→投資に消極的な)状態です。木を見て森を見ない議論の典型です。

政府の支出政策も、お粗末な対策に終わる可能性が高い。景気刺激策はこれまで、特に建設業界の既得権益の要求をそのまま反映しており、乗数効果がゼロだった。

乗数効果がゼロということはありません。IMFのチーフエコノミストも、乗数効果が過小評価されてきたことについて指摘しています。

たとえアベノミクスが円安の結果としてより高い物価上昇率をもたらすことに成功したとしても、賃金は恐らくインフレに追いつかないだろう。賃金は物価に追いついたことがないからだ。その場合、弱い内需は一段と弱くなる。

2003~07年に不十分だったのがこの点ですが、アベノミクスではこの失敗が反省されています。

一部のバンカーは、ほぼ150年前の明治時代以来、日本は戦争によってしか景気後退から脱したことがないと指摘する。

明治維新からバブル崩壊までの日本経済は、世界史に特筆されるほどの急成長を遂げましたが、それがすべて戦争需要によるものとは初耳です。よほど歴史に無知なバンカーなのでしょう。 

 

日本をよく知らない記者にありがちな、結論先にありきの記事でした。