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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

アメリカが(本気では)円安を問題にしない理由

「失われた20年」の本質は円高・製造業不況】でも触れましたが、1980年代から90年代半ばまでのアメリカの過激な日本叩きは日本人に深刻なトラウマを残しました。「出る杭は打たれる⇒経済力(特に輸出競争力)を力強く回復させないほうが賢明」、「対外摩擦は事前回避する⇒積極的な円安(につながる金融緩和)は自主規制する」、というのが深層心理においてはコンセンサスになったのです。「割高な円為替レートを金融緩和(円売り介入も選択肢の一つ)によって是正する」という経済政策の定石が邪道として黙殺されたり、小国化が日本の進むべき道としてやたらと推奨されるのも、このコンセンサスによって説明できます。まさに事大主義そのものです。 

事大主義Wikipedia
「小国である自国はその分を弁えて、自国よりも大国の利益のために尽くすべきである」といった「大国に媚びへつらう卑屈な政策」

事大主義のパラダイムでは、円安を志向するアベノミクス は「属国・日本が宗主国・アメリカに逆らう」ことを意味するため、「アメリカの怒りを買うのでは」という懸念が根強いようです*1。しかし、1980年代と現在の経済状況を比較すると、その可能性は低いと考えられます。

過去の日本叩きと円高圧力の直接の原因は、アメリカの対日貿易赤字拡大と一部製造業(特に自動車)の競争力低下です。1986年のピークには、対日貿易赤字はGDPの1.2%に達し、「日本が不公正貿易をしている」「アメリカが日本に乗っ取られる」など、日本への敵意が高まりました。

しかし、2011年には対中国赤字が1.9%まで急拡大する一方、対日赤字は0.3%と1970年代の水準にまで減少し、メキシコよりも少なくなっています。仮に1ドル=100円台の円安になっても、政治問題化するほど対日貿易赤字が拡大することは考えられません。

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そもそも、日本の輸出競争力は著しく低下しており、多少円安になった程度で、アメリカが脅威に感じるほど急回復することはありえません。2012年の貿易収支は対GDP比2.0%の赤字で1957年以来の低水準です。 

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過去記事に「日本経済完全復活の最大の懸念材料は、アメリカの対日圧力再開」と書きましたが、アメリカが本気で円安阻止・円高誘導してくる可能性は低いと見てよいでしょう。

ただし、だからといってアメリカが円安を問題にしないとは限りません。円安が日本人の心理的弱点であることをアメリカは熟知しているので、外交通商交渉において日本に譲歩を迫る取引材料として円安を持ち出してくることは十分に考えられます*2。アメリカ政府から円安を問題視するコメントが出てきた際には、その意図を正しく推察することが重要です。過剰反応して円安にブレーキをかけ、経済再生の芽を自ら摘んでしまうことだけは避けなければなりません。

*1:朝鮮が清に逆らった結果大清皇帝功徳碑Wikipedia

*2:韓国・中国がしつこく歴史問題を言い立てるのと同じことです。