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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

中国の経済統計の疑惑?

3/30にBS11本格報道INsideOUT」で放送された「中国経済成長の終焉・どう動く日中経済」(ゲスト:津上俊哉)を見て気になったことがあったので書き記しておきます。

ゲストの津上は、近年の中国の巨額の投資について以下のような疑問を呈していました。

  • 2009~12年の固定資産投資の総額は100兆元超。
  • 2012年の預金残高は92兆元、中長期貸付総額は35兆元しかない。
  • 銀行融資以外の資金調達を足しても、100兆元がファイナンスできたという気がしない。

銀行の資金量が92兆元しかないのに、どうやったら100兆元超の投資が可能なのか(実際の投資額はもっと少ないのでは)?、というニュアンスでした。預金が貸出の原資になっている(銀行が預金を集める→企業や政府に貸し出す→企業や政府が投資を実行)という意味だとすれば、預金と貸出の関係についての典型的な誤解ということになります。

金融政策の基礎解説③:預金/現金/日銀当座預金」で説明しましたが、銀行は集めた預金を貸し出しているのではなく、銀行が貸し出すことによって預金が創造されているのです(信用創造)。昨日の記事のリンク先で紹介されている国際決済銀行ワーキングペーパー(※1)でも、「預金は貸出に先立ってある金ではない。貸出が預金を作るのだ」("Deposits are not endowments that precede loan formation; it is loans that create deposits." )と述べられています。

また、預金は現金と同様に流通するので、現金が日銀に回収されるまでに幾多の支出をファイナンスするように、預金も銀行に返済されて消滅するまでに幾多の支出をファイナンスできます(通貨の回転)。1円の現金または預金が存在すれば、その何倍もの支出が生まれるということです。

つまり、100兆元の投資の事前にも事後にも100兆元の預金が存在する必要はないのです。日本でも、2003~12年の10年間の投資(民間住宅+民間企業設備+公的資本形成)は1070兆円ですが、M2(現金+預金)残高は700兆円弱~800兆円強に過ぎません(この間の増加額も150兆円)。中国の統計が疑わしいのであれば、日本の統計も疑わしいことになってしまいます。

現代経済について語るためには、信用創造を正しく理解することが必要です。

(※1)The financial cycle and macroeconomics: What have we learnt?(BIS Working Papers No 395)

中国台頭の終焉 (日経プレミアシリーズ)

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