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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

外人エコノミストが警告するアベノミクスの不安材料

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黒田日銀の“常軌を逸した”金融緩和策により、日本経済の先行きへの楽観的な見方が強まっているようです。しかし、このような時こそ、浮かれることなく冷徹な分析に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。私が傾聴する外人エコノミスト2人が極めて重要な指摘をしているのでご紹介します。

まずはFinancial Timesのマーティン・ウルフです(FTは有料ですが、以下のリンク先なら無料で読めます)。 

この中で引用されているアンドリュー・スミザーズのアベノミクス評はこちら。

両者の重要な指摘とは、日本人がほとんど気付いていない「日本は投資過剰・消費過少」ということです。一般論として、高成長経済では投資のリターンが大きいために投資が促進され、経済に占める投資(民間設備投資+公共投資)の割合は高くなります。

アメリカの場合、投資がGDPに占める割合は過去半世紀の間約15%で安定していますが、これは実質成長率も3%前後で安定しているためと経済合理的に説明できます。

ところが日本は、高度成長期終焉後も投資がGDPに占める割合の低下は小幅にとどまりました。1990年代後半以降は実質成長率がアメリカを下回るまで低下したにもかかわらず、依然として投資がGDPに占める割合がアメリカを上回り続けています。このことは、1980年代以降の日本経済が非効率な(リターンの小さい)投資によって嵩上げされてきたことを意味しています。これからは投資ではなく消費を拡大させなければ、経済成長は持続可能なものにはならず、いずれは失速が不可避ということです。

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日本経済再生のゴールを消費拡大に置くなら、消費税率引き上げは先送りして、1990年代後半から顕著になった「人件費を削ってキャッシュを貯めこむ」企業行動を変えることが先決です*1。しかし、未だに「設備投資こそ経済の牽引役」という高度成長期的発想に憑りつかれている人が多いのが気になるところです。

過剰投資・過少消費を是正しなければ、円安・株高による景気浮遊力はいずれ減衰してしまいます。アベノミクスを日本経済の「緩慢な死」の先延ばしに終わらせないためには、企業寄りに偏ったこれまでの経済政策を転換し、賃上げ・雇用安定を復活させることが欠かせません。

もう一つの構造問題である社会保障制度改革と少子化対策が手付かずであることも考慮すると、日本の将来を楽観視するのはまだ早すぎるでしょう。

少子化は過剰投資の裏返し」に続きます。

 

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*1:ウルフは、企業にキャッシュを吐き出させるために株主の力を強めることを提案していますが、これについては同意しかねます。高配当を求める株主(特に外人)の力が強まれば、投資よりも先に人件費が削られる可能性が高いと思われるからです。