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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

国家は(計算間違いで)破綻する?

財政・国債

欧米の財政赤字削減策の理論的根拠になっていた研究に計算間違い疑惑が浮上して大騒ぎになっています。(追記:続報記事『国家は破綻する』の計算間違い:続報

ラインハートとロゴフによるこの研究は"This Time Is Different: Eight Centuries of Financial Folly"として一般向けにも出版されて注目を集めました。日本でも『国家は破綻する――金融危機の800年』と題して翻訳出版され、好意的な書評が目立ちます。

ラインハートとロゴフは、先進国のヒストリカルデータから、政府債務の対GDP比が高まるほど実質成長率は低下し、90%を超えると平均値はマイナスに落ち込むことを発見しました。そのインプリケーションは当然、成長率を落とさないためには財政赤字削減が必要であり、これが緊縮財政政策を正当化する根拠とされてきたのです。

ところが、この度発表された論文は、これには重大な誤りがあると指摘しています。

こちらは紹介記事

要点は、

  1. データが恣意的に選ばれている。高債務・高成長の年が除外されている。
  2. 平均値の求め方(ウェイト付け)がおかしい。イギリスは高債務・高成長を19年続けたが、単なる1データとして扱われている。(紹介記事へのコメントがうまいたとえをしていますが、500打数100安打・打率2割の打者と1打数1安打・打率10割の打者から「平均打率は6割」とするようなものです。)
  3. 平均値を求めるエクセル式が誤っている。一部データが計算式から抜け落ちている。 

これらを修正すると、政府債務の対GDP比が90%を超えた国の実質成長率は平均2.2%となり、ラインハートとロゴフの-0.1%とは大差が生じます。当然、その政策的インプリケーションもまったく違ったものになります。

自分の先入観に合致するデータを選択的に取りこむ確証バイアスが財政赤字削減論者に緊縮政策の必要性を確信させる→緊縮政策が不況を深刻化させる→GDP縮小・税収減によって政府債務の対GDP比が上昇する→緊縮政策が強化される→…という事態が生じていたのだとすると恐ろしいことです。この議論がどう決着するか、目が離せません。

 

東洋経済2011年夏ベスト経済書の推薦者(熊野英生、土居丈朗、米山秀隆、井上寿一)のコメントも聞いてみたいです。(上のリンク先記事の3ページ)

 

クルーグマンのコメント

 

追記:続報記事

 

国家は破綻する――金融危機の800年

国家は破綻する――金融危機の800年