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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

学校間競争の帰結と扇動者の実態

政治・歴史・社会

教育改革には、学力テストに基づいて公立小中学校間競争を促進することが有効、という考えが根強くあります。

「成果」の明確なメルクマールと学校・教師間の競争が存在しないことが教育の質が向上しない原因なのだから、学力テストの結果をメルクマールにして競争を促進すれば教育の質は向上するはず、という仮説です。学力テストの結果に応じて学校・教師の予算・報酬に差をつければ、学校・教師は「教育の質向上競争」へと駆り立てられ、結果的に子供の学力は向上する、という市場競争的シナリオが描かれています。

ところが、既にこの政策が実施されているアメリカでは、その問題性が明らかになってきています。 

さらに、つい先日には、この政策の火付け役だったミシェル・リー韓国系移民二世)にも改竄隠蔽疑惑が浮上して騒ぎが大きくなっています。誤答を正答に書き換えるなどの改竄が学校ぐるみで行われていた疑いが報告されていたのに、調査をせず隠蔽したというものです(いじめ問題に対する日本各地の教育委員会の対応と似ています)。

リーはワシントンDCの教育長時代(2007~10)に、テストの成績を上げられない学校の予算削減や教師の解雇を強行し、「教育改革の旗手」として全米の注目を集めました。退任後*1は公教育改革を呼びかける団体"StudentsFirst"を立ち上げて、同様の主張を続けています。しかし、この疑惑が真実だとすれば、リーの改革者としての資質・主張が疑問視されることは避けられないため、大騒ぎになっているのです*2。確かなのは、リーの退任後に不正対策を徹底した学校でテストの成績が急落したことです。

ちなみに、リーは自分を"public-school parent"(子供を公立学校に通わせている)と言っていましたが、最近になって二人の娘のうち一人は私立女子校に通っていることを認めました。自分の子供を学力テストとは無縁の私立学校に通わせておきながら、自分を公教育改革の当事者でもある"public-school parent"と称してテスト漬け教育を推進していたわけです。

アメリカでは、学力テストに基づく成果主義は当初の狙い通りの結果を出せないばかりか犯罪まで引き起こしてしまったわけですが、これは、総合的評価が求められる分野に一面的評価基準を導入することの危険性を如実に示しています。学力テストの結果だけで学校教育の成果が測れるはずがないにもかかわらず、学力テストの結果に基づいてアメとムチを行使した結果、学校と教師の行動が歪められてしまったのです。*3

同様の失敗は他分野でも見られます。株価を目標にした企業経営(→長期的視点の欠落、経営陣の報酬の超高額化)、インフレ率だけを目標にした中央銀行の金融政策(→バブルを放置)、生産量のノルマ達成を目標にした共産主義(→質的向上意欲の欠落)、等々です。医療にはまだ被害が及んでいないのが救いです。

人間には、複雑な事象を単純明快に割り切りたくなる本能的傾向がありますが、それに屈しない人間を養成することも教育の役割の一つでしょう。

 

こんな人です。


Michelle Rhee 'This Week' Interview: Author of "Radical: Fighting to Put Students First."

*1:無名のリーを抜擢した人気市長が次の選挙で落選したため退任に追い込まれました。

*2:本人は"absolutely incorrect"と全面否定しています。

*3:リーは学力テストの結果を教師の評定の50%に用いました。