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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

橋下市長の「慰安婦」発言と発信型英語力の必要性

政治・歴史・社会

いわゆる「従軍慰安婦」 に関する橋下大阪市長の発言が内外に波紋を広げていますが、これほどまでに問題が拡大してしまった一因として、日本の情報発信能力の異常なまでの低さ、具体的には、日本のエリートに外人にどう受け止められるかという観念が決定的に欠けていることを見過ごすことはできません。

重大なミスは、「慰安婦」を現代英語の適訳である"sex worker"ではなく、婉曲表現の日本語の漢字をそのまま英語に置き換えた"comfort woman"と英訳して海外に発信してしまったことです(慰安=comfort,婦=woman)。

外人には耳慣れない言葉なので、他国の類例のない日本独自のもの、という先入観が生じます[1]。そこに悪意のある人間が付けこんで、実態は"sex slave"と外人が理解できる既知の言葉に置き換えれば、その強烈な具体的イメージが世界中の人に刷り込まれたとしても不思議ではありません。欧米が19世紀中に廃止した奴隷制が、20世紀の日本に秘密裏に存在していた(しかも性差別とセットで)、というのはかなりショッキングです。現代でも、犯罪組織に騙された女性が"sex slave"にされる"human trafficking"の問題が世界中で深刻ですが、それと同じことを日本だけが大大的に行っていた、すなわち、日本国家=超巨大犯罪組織と認定されているのです。「慰安婦」がナチスドイツに匹敵する重大な国家的犯罪・人権侵害と非難されているのはそのためです(戦争とは次元の違う犯罪ということ)。日本流の曖昧表現を不用意に使った結果、60万人近くの民間人が殺害された原爆や無差別爆撃を「慰安婦」に比べれば些事にされてしまったことは極めて重大です(←どの国に都合がいいかはお分かりでしょう)。[2]

一度社会に「有罪認定」されてしまうと、名誉回復が極めて困難であることは、日本国内の冤罪事件を見ても明らかでしょう。

あるアメリカ人のマーケティング専門家も、東京オリンピック招致WEBサイトを例に、日本人の直訳癖とその危険性について指摘しています。[3]

"Japanese organizations that enter the global markets by simply translating the content they created for the local Japan marketplace."

"what happens when *you* simply translate *your* materials into the local languages of countries whose markets you enter."

現代ヨーロッパでも合法化されている"sex worker"を、普遍的な人権侵害・人類の負の歴史という共通認識が定着している"slave"にすり替えたのは反日勢力の作戦勝ちではありますが、それよりも、付け入る隙を自ら与えた日本政府のオウンゴール負け、というのが客観的な判定でしょう[4]。大東亜戦争が想起されます。

 

最後に、5/8記事(日本の衰退戦略としてのTOEFL導入)で紹介した外国語教育の専門家である鈴木孝夫の主張を改めて紹介しておきます(強調は引用者)。"Comfort woman"ではなく"sex worker"とすぐに頭に浮かんでくるような、日本と外国の歴史・文化の知識を基盤とする発信型の英語力を持つエリート育成が急務です。

本当に英語を必要とするのは、仕事の成否が英語力の有無に左右されるような人で、こういう人たちは日本人のごく一部です。よく指摘されるような、英語ができないと国際競争に勝ち残れないという警鐘は、政治家や一部の官僚、一部の研究者など政治や経済、学問の最前線で国際社会の矢面に立たなければならない人たちに向けられているのであって、全国民を対象にした話ではありません。にもかかわらず、これからの日本人は英語くらい話せるようになるべきだ、といつのまにか国民全体に問題が責任転嫁されてしまった。だから英語を必要としない人にまで義務教育における必修で学習を強制した反面、本当に高度の英語力が求められる人材がいつまでも育たないという困った状況になっているのです。

その高度の英語力とは、必要なときには自分の意見や日本人の物の考え方を歴史・文化的な背景から説明ができる発信型の英語力です。

 

[1]歴史を知らなければ、日本人でも「慰安婦」という言葉からは癒し系メイドのようなものがイメージされるのではないでしょうか。

[2]原爆・無差別爆撃よりも慰安婦のほうが重大な「犯罪」と思う人には、下の動画を見ることをお勧めします。


The Bomb Sends a Message to the World - Untold ...

追記:韓国紙が原爆投下を「神の懲罰」と言っています。

[3]日本独自の直訳英語は経済用語にもあります。租税負担+社会保障負担の対国民所得比を意味する国民負担率という用語を聞いたことがあるかもしれませんが、これは国際比較に適切な指標ではないため、外国では一般的に利用されていません。インターネットで"national burden rate"と検索すると、日本人の文献ばかりがヒットしますが、これも外人の立場に立たずに直訳してしまう癖の一例と言えます。

[4]「慰安婦」が"sex worker"と訳されていれば、ヨーロッパの"sex worker"と相対化されるため、人身売買等の犯罪被害が日本独自の重大な国家的人権侵害ではなかったと理解されていた可能性が高いのではないでしょうか。ヨーロッパでは、犯罪や衛生問題の防止のために政府当局の関与が強められています(⇔日本軍の関与)。

 

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