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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

日本を韓国化する成長戦略の危険性

アベノミクス

5/8の記事「日本の衰退戦略としてのTOEFL導入」の続きです。

成長戦略で懸念されるのは、「世界で勝つ」をキーワードの一つにしていることに示されるように、円高によって失われたグローバル市場での失地回復に気が逸り過ぎているように見えることです。成長戦略の推進派の主張を総合すると、1997年の通貨危機後、国を挙げて「国際競争力」の強化に邁進した韓国をモデルにしているように見受けられます。「TOEFL導入」の提言も、英語教育熱が高まる韓国に刺激されてのことでしょう。

ここ数年、「大躍進したサムスンvs圧倒される日本のエレクトロニクス産業」の構図を韓国経済と日本経済全体に当てはめ、「昇る韓国・沈む日本」「日本は韓国に学んで構造改革するべき」とする論調が勢いを増しました。

しかし、たとえ一部産業で韓国が優勢だとしても、韓国が日本のモデルにふさわしいとは限りません。韓国の「成功」の実態を見れば、その理由が明らかになります。

韓国経済が日本に急迫しているのは事実です。購買力平価換算した1人当たりGDPを比較すると、1998年(通貨危機の翌年)は日本の55%の水準でしたが、2011年には90%に迫っています(日本が最もアメリカに迫った91年の水準は87%)。これだけ見れば、「韓国に学べ」に説得力を感じるかもしれません。

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しかし、日韓の実質成長率を比べると、これは韓国が高成長した結果ではなく、日本の成長率が円高のために異常低下した結果であることが分かります。サムスンの飛躍に反して、韓国経済の成長トレンドは低下しています。

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成長トレンドの低下とは逆に、貿易依存度は急上昇しています。通貨危機前には対GDP比30%強だった輸出入が現在では約55%に達しています。一般的に、貿易は経済成長率を高めますが、韓国の貿易は経済成長に寄与しない水準まで拡大してしまったことが示唆されます。

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輸出入の増加を企業にたとえると、低採算部門の生産は停止して外部調達に置き換え(輸入)、高採算部門の生産に特化する(輸入)、「選択と集中」戦略です。これは特定資産(銘柄)への集中投資と同じで、当たれば大儲け・外れると大損の高リスク・高リターン戦略です。シャープが経営破綻寸前まで追い詰められたのも、集中投資した液晶と太陽電池のリターンが悪化したためです。

韓国の「貿易依存度上昇・成長率低下」は「選択と集中が成長に結びついていない」こと、すなわち、経済が高リスク・低リターン(最悪の組み合わせ)に向かっていることを意味します。韓国は国全体が“シャープ化”する危険性に直面していると言ってもよいでしょう(円安・ウォン高はその確率を高めます)。

韓国経済の高リスク化は、個人の生活のリスクも高めました。その最たるものが雇用の不安定化で、医学部ブーム(⇔優秀なエンジニアの減少)、自殺率の急上昇などの負の影響が顕著です。韓国人経済学者ハジュン・チャンは、韓国の構造改革を「不幸への処方箋」と評しています。

日本の最重要課題の一つである少子化対策でも、韓国の出生率は日本より低いことから、反面教師にしかなりません。

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「成長率は低下傾向・リスクは増大(不安定化)・生活満足度は低下」が韓国の実態であることを知れば、韓国型経済改革が日本のモデルになり得ないことは明らかでしょう。5/8の記事「日本の衰退戦略としてのTOEFL導入」にも書きましたが、安易な外国志向は、自らの強みを捨てる必敗の戦略です。日本の強みである産業と人材の多種多様さ分散投資、中リスク・中リターン)や海外に影響されにくい内需主体の経済を捨てて、真逆の韓国スタイルに転換することの無意味さと危険性を認識してもらいたいものです。