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Think outside the box

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「アメリカは量的緩和でデフレ脱却に成功した」という流説

金融

量的緩和とインフレ率について看過できない記述が日経ビジネスオンラインにあったので検証します(強調は引用者)。

米連邦準備制度理事会FRB)のベン・バーナンキ議長は学者ですが、彼は中央銀行にできることは何でもやると言い切って、そのような政策が最終的には効いてくると説明してきました。実際に、FRB量的緩和などによってデフレからの脱却には成功した。

アメリカの消費者物価指数(CPI-U)上昇率はリーマンショック直前の2008年7月をピークに急落し、2009年7月には-2%にまで落ち込みましたが、そこから急反転して11月には2%のプラスに転じ、以後はプラス領域で落ち着いています。

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「インフレ率急低下→量的緩和(超過準備の積み上げ)→インフレ率が反転急上昇」の時系列推移は、「量的緩和によってデフレからの脱却に成功した」ことの確かな証拠に見えます。

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しかし、消費者物価指数の変化率は、食品やエネルギーの市況変動によって大きく上下することが知られています。傾向的な物価動向を見る際には、市況変動の影響を除いた「コア指数」を用いるのが普通です。そこで、個人消費支出価格指数(食品・エネルギーを除く)の変化率を見ると、リーマンショック前の2%強がショック後には1%台に低下しただけであり、そもそもデフレに落ち込んでいなかったことが分かります。

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リーマンショック前後のCPI-U上昇率の上下動はエネルギー価格の大きな変動を反映したものであり、量的緩和とは(ほとんど)無関係であることは明らかです。

アメリカが日本と違ってデフレに落ち込まなかったのは、デフレ→賃下げ→デフレ→…のスパイラルが未然に防がれたためです。賃金・給料指数は1%台後半の上昇率を維持しています。

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日本が賃下げ→デフレのスパイラルに突入したのは、1998年に円安よりも賃下げを選択したからですが、アメリカはリーマンショック直後を除くとドル高を回避できたために、ドル建ての賃金・給料の下落も回避できているのです。ドル安が必ずしも量的緩和によるものではないこともポイントです。

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デフレ脱却には為替レート減価や賃上げが極めて重要なのですが、それよりもほとんど無関係の量的緩和の効果を事実を歪めてまで強調する専門家の心理には理解し難いものがあります。

 

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