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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「脱・プラザ合意」が日本経済を復活させる

アベノミクス 経済記事ピックアップ

「失われた20年」の根本原因が過度の円高であり、日本経済の完全復活には円高是正(1ドル=105~110円)が必要であることは過去記事で繰り返し説明してきました。

日本経済復活の成否は、昨年11月の1ドル=80円から100円にまで進んだ円安の持続力にかかっているということです。そこで、円安持続可能性について長期的な観点から検証します。

普段、為替レートといえば名目為替レートを指しますが、経済への影響を長期的に見る場合には、自国と外国の物価水準の変化を調整した実質為替レート*1が用いられます。輸出競争力と輸出入は名目為替レートではなく実質為替レートが左右するためです。外国の物価が一定なら、名目為替レートの10%減価と物価の10%下落はどちらも実質為替レートを10%減価させます*2

1ドル=360円時代末期の1971年から日米の物価指数を比較すると、1977年以降は日本のインフレ率がアメリカを継続的に下回っており、対ドルでの実質円為替レートの減価要因(→日本の輸出競争力アップ)であったことが分かります。

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もっとも、名目為替レートは約3倍に増価しため、実質為替レートは増価しています。特に注目されるのが、1985年のプラザ合意前後で水準が非連続的に変化していることです。実質1ドル=100円(2013年基準、以下同)はプラザ合意前は「行き過ぎた円高」水準だったのが、合意後は「行き過ぎた円安」水準にシフトしています*3。「行き過ぎた円高」の水準は実質1ドル=100円から80円に25%も上方シフトしました。

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実質為替レートを拡大します。105.8円は80円と140円の中間値です*4

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このグラフからは、日本経済にとっては実質1ドル=100円が水面であり、それより円高水準は水面下に顔を沈められた苦しい状況だったことがイメージできます*5。たまに実質1ドル=100円に顔を出した時に一息ついていたわけです。余裕を持つためには1ドル=105~110円が必要であることも示唆されます。

日本経済にとっての焦点は、最低でも実質1ドル=100円、できれば110円を持続できるかどうかです。為替レートを動かす主因は金利差なので、そのために必要な金利差を過去の相関から推計すると、4±1%ポイントとなります。

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日本の金利はゼロ下限に達しているので、アメリカの金利が4%ポイント上昇することが必要ですが、これは非現実的です。アメリカの予想インフレ率の4%ポイントの低下もしくは日本の予想インフレ率の4%の上昇でも実質金利差は4%ポイント拡大しますが、これも現実的ではありません。つまり、1ドル=80円から100円への円安は金利差等のファンダメンタルズに支えられたものではなく、アベノミクス期待による政治相場ということです。

一般的に、ファンダメンタルズに支えられていない相場は長続きしないのが特徴なので、日本経済再生を確実なものにするためには、現在の金利差と整合的な為替レートが1ドル=100円であると外為市場の水準感を大きく変えてしまうことが有効です。

水準感の大転換といえばプラザ合意が代表例ですが、それ以外にも1993年のクリントン大統領の円高誘導など、金利差と整合しない政治的円高は過去にありました。これまではアメリカ主導の円高でしたが、同じことを日本が逆向きに実行すればよいわけです。

「金利差等のファンダメンタルズに支えられたものではなく」と書きましたが、本来の実質為替レートのファンダメンタルズは輸出競争力であり、それに基づけば1ドル=100円台こそファンダメンタルズと整合的な水準です。本来は実質1ドル=100円が「行き過ぎた円高」の境目なのに、これが80円にずれてしまったため、100円が金利差に支えられていないように見えてしまっているのです。

プラザ合意によって狂わされた実質円為替レートの適正水準の是正なくして日本経済再生なし、ということを改めて強調しておきます。

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*1:名目為替レート×自国の物価指数/外国の物価指数

*2:円安とデフレは交換可能ということです。日本のデフレは名目円安を避けた結果です

*3:1998年夏に実質1ドル=100円台に乗せていますが、この時は「行き過ぎた円安」懸念が日本中を覆い、大蔵省は円買い介入を実施しています。詳しくは2/1【円安かデフレスパイラルか、日本の分岐点だった1998年夏】を参照。

*4:105.8/80=140/105.8

*5:円高不況→超金融緩和・バブル→バブル崩壊→超円高・失われた20年と続く日本経済の変調の始まりがプラザ合意であったことはもっと注目されるべきでしょう。