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シングルマザー奨励は少子化対策なのか

少子化問題に国民的関心が高まっているのは結構なことなのですが、人口問題の専門知識を欠いた人々が議論に参入することで混乱が生じている感は否めません。特に、少子化問題を政府批判の材料として利用するイデオロギー的バイアスの強い論者や、多分野から参入してきた有名人に極端な主張が目立ちます(注目を浴びることが目的?)。

日本の出生率低下の主因は既婚率の低下ですが、一部の論者は

  • ヨーロッパでは婚外子の割合が高い国ほど出生率が高い
  • 結婚を出産の前提とする日本の政策は的を外している
  • 未婚でも子供を産み育てられる制度・環境整備こそ出生率引き上げに効果的

と主張しています。そこで今回はこれらについて検証します。

「ヨーロッパでは婚外子割合が高い国ほど出生率が高い」という主張はよく聞かれます。確かに、以前はこのような傾向が見られましたが、近年は低出生率の国々でも婚外子割合が増大しており、正の相関関係は弱まっています*1。そもそも、婚外子割合は社会の変化を反映したものであって政策変数ではないため、「出生率を引き上げるために婚外子割合を高める政策を取る」わけにはいきません。

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誤解している人も多いようですが、婚外子=シングルマザーの子ではありません。ヨーロッパでは伝統的な結婚制度と男女同等化の現実との不調和が目立ってきたため、必ずしも男女のパートナーシップ=結婚ではなくなり、"cohabitation"や"consensual union"と呼ばれる新たなパートナーシップ形態を選択するカップルが増えているだけです。婚外子の割合が4~5割を超える北欧諸国でも、0歳児の9割は両親が育てており、シングルマザー・ファーザーは1割に過ぎません*2男女のパートナーシップ形成が出産の前提になっているのは日本もヨーロッパも同じです。

伝統的な結婚制度が現代日本にも合わなくなってきたことは確かでしょうが、それを出生率引き上げ策と直結させるのは論理の飛躍でしょう。

「女性手帳」で的外れの批判を浴びた内閣府少子化危機突破タスクフォースの第1回では、吉松育美委員(ミスインターナショナル2012)が 

同じ世代の友達を見ていると、産婦人科を見つけるのも苦労している友達や、私の出身が九州の佐賀県だが、田舎は早い歳でできちゃった結婚をしてしまって、シングルマザーも多い。ひいひい言いながらシングルマザーを頑張って、働いている友達もいる。

と発言していますが、シングルマザーになって苦労しているのは結果論であり、夫(パートナー)と分かれるリスク・別れた後に生活苦に陥るリスクを事前に考慮して出産を控えている女、あるいは夫は不要で子供だけ欲しい女はそれほど多くはないでしょう。結果的にシングルマザー(またはファーザー)になってしまった人の支援態勢の充実は必要でしょうが、それが出生率引き上げの切り札になるというのは期待し過ぎです。

一部の論者が少子化対策の決め手として唱える「結婚(またはパートナーシップ)と出産を切り離してシングルマザーを増やす」ですが、これは、 愛人・2号・妾に産ませた子供を他人(社会)の金で育ててもらうことに他なりません*3実上の一夫多妻制(しかも夫と父親の責任と義務は免除)で、一部の男にとっては夢のような制度です*4出生率にプラスの効果があることは確かでしょうが、それを社会が許容できるかは別の話です*5

このような極論が取り上げられる一方で、非婚化の原因が男女の同等化と女の要求水準の上昇にあることや、社会保障制度が出産抑制のインセンティブになっていることなどの基本要因が無視されるのでは、有効な少子化対策は期待薄と言わざるを得ません。

婚外子増加は出生率“低下”と同根】に続きます。

 

追記:参考記事

www.swissinfo.ch

blogos.com

 

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*1:グラフ右上のアイスランド、フランス、ノルウェースウェーデンによって正の相関が強められています。

*2:10歳以上の子供では2割強

*3:現在の日本の婚外子の割合は2%強ですが、昭和初期は6~7%でした。

*4:このような主張をする男の本音かもしれません。

*5:出産につながることはすべてに優先されるという「目的のためには手段を選ばない」過激なイデオロギーを国是にするかどうかです。