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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

婚外子増加は出生率“低下”と同根

少子化・ジェンダー

7/3【シングルマザー奨励は少子化対策なのか】の続きです。

ヨーロッパ系の国々で出生に占める婚外子の割合が急拡大したことと、婚外子の割合が高い国では出生率が高い傾向が(以前は)見られたことを根拠に、結婚制度を解体して婚外子を増やすことが日本の少子化対策の決め手、と主張する論者がいます。

婚外子が認められない→多数の女が出産をためらう→出生率低下」が出生率低下のメカニズムなので、遅れた日本もヨーロッパ系の進んだ国々を見習って「婚外子が認められるようになる→シングルマザーでもOKと考える女が出産を積極化→出生率上昇」の方向に進むべき、というロジックです。 

人間には自分の信じたいものを信じるバイアスがあるためか、「進歩的」な人ほどこの主張に同調する傾向がある*1ようですが、残念ながら「婚外子割合の増大→出生率上昇」は事実ではありません。婚外子割合の増大が西ヨーロッパに遅れて生じたチェコとハンガリーでは、1990年前後からの婚外子割合の増大が合計出生率(TFR)低下と同時進行していました*2

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この二国には共産主義体制崩壊という特殊事情があるので参考にならない、と反論したい人もいるかもしれないので、西ヨーロッパの比較的出生率の高い国のデータも示します。

アイルランド(2011年のTFR2.04)のTFRは1970年から1990年にかけて4→2に低下していますが、婚外子の割合は1980年代から顕著に増大しています。

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英国(2011年のTFR1.93)では1970年代にTFRが急落していますが、婚外子の割合は1970年代末から急増しています。 

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オランダ(2012年のTFR1.72)では1960年代後半から1970年代半ばにかけてTFRが急落し、1980年代からは婚外子の割合が急増しています。

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フィンランド(2011年のTFR1.83)では、1900年頃から1940年頃の第一のTFR低下局面(5→2台)では婚外子の割合は変化していませんが、1960年代の第二の低下局面(2台後半→1台後半)から10年ほど遅れて婚外子割合の急増が起こっています。

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長期的に見れば、婚外子割合の増大は出生率上昇ではなく低下と(少し遅れて)連動しています。婚外子が認められないことが出生率を押し下げていたのであれば、婚外子割合が増大すれば出生率も反転上昇するはずですが、そうはなっていません。

これは、第二の局面における出生率低下の原因が男女の社会的地位の同等化(女性解放)であることを考慮すれば当然のことです。女は独立して生計を立てることが困難で、男も家庭において女手を必要としていた時代には、男女を運命共同体として強く結び付けるために、分かれにくい結婚制度が適していました。しかし、女の経済的自立が可能になれば、男女を結び付ける力は弱まるため、分かれにくい結婚制度を窮屈と感じるカップルも増えます。そのため、緩やかなパートナーシップを選択した男女の子(婚外子)の割合が、出生率の低下に少し遅れて増え始めたのです。出生率低下と婚外子割合の増大はどちらも女性解放が原因だったということです。

ヨーロッパでは結婚がキリスト教会と切り離せないものであったことも関係しています。脱キリスト教化・世俗化を行動で示すことの一つが、結婚以外のパートナーシップを選択することだったためです。

このようなヨーロッパの出産と結婚の実態からは、「結婚制度の解体や婚外子を積極的に認めることが少子化対策の切り札」という政策的インプリケーションが導かれようがありません*3

このような主張をする人は

  • 単に無知(人口学や統計の知識を欠いている)
  • 結婚制度や社会規範に敵意・破壊願望を持っている(いわゆる進歩的イデオロギー)
  • 夫や父親としての義務と責任は果たさずに自分の遺伝子を多く残したい男
  • 奇を衒った主張で注目を集めたい

などとプロファイリングできますが、少子化を出しにして自分の主義主張を叫び、議論を混乱させるのはやめてもらいたいものです。

 

追記:参考記事

*1:フィギュアスケートの安藤美姫選手の出産と満島ひかり(元Folder5)がシングルマザーを演じるドラマ「Woman」がタイミングよく始まったことが、この主張を勢いづけているようです。

*2:旧共産圏の出生率体制崩壊後に急落したことには重要な要因が関係しています。これについては別記事で解説する予定です。

*3:結婚制度の見直しは少子化対策とは別に必要です。