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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

政府の負債という「幽霊」を恐れる愚

財政・国債

6月末の国の借金(国債及び借入金並びに政府保証債務現在高)が1000兆円を超えたことがニュースになっています。財政再建のために消費税率引き上げを断行せよ、という声は海外からも届いています。

しかし、現代の通貨制度の下では、政府負債の削減を政策目標の上位に置くことは無意味であるだけでなく危険です。詳しくは8月下旬から掲載予定ですが、その前に要点を二つ指摘しておきます。

7/23【日銀理論は地動説、世界標準理論は天動説】や【金融政策の基礎解説】シリーズで解説していますが、現代の通貨制度では、預金は銀行の貸出や有価証券買い入れによって生まれ、現金は中央銀行の貸出や有価証券買い入れによって生まれます。つまり、マネーは誰かの負債ということです。経済全体にとって重要なのはマネー(あるいは信用)の総額なので、政府の負債が過大か否かは、政府単体ではなく他部門と合わせて判断しなければなりません。

そこで、企業、政府、家計の主要三部門の合計負債残高を見ると、何ら異常な増加をしていないことがはっきりします。1990年代後半から、企業と家計は負債圧縮に努めていますが、これを放置すればマネーの総額が減少して経済が縮小均衡に向かってしまいます。政府の負債が急増しているのはこれを防ぐためであり、 むしろ肯定的に捉えるべきものです。増税は流通するマネーを減らして経済を縮小させる危険行為であることも理解できるでしょう。

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負債をグロスではなくネットで見ると、企業と政府の負債の入れ替わりがより鮮明になります。 

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企業と政府の負債合計が過大ではないことはGDP比からも明らかです。

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さらに重要なことは、財政破綻すなわち日本国債のデフォルトは原理的にあり得ないことです。企業や家計、地方公共団体は負債を返済するためにマネーを外部から調達しなければなりませんが、政府(国)は日本銀行と一体化すれば円の現金を無限に内製できるためです*1

要するに、財政破綻とは現実には存在しない幽霊のようなものであり、「破綻回避のために増税が必要」というロジックも誤りということになります*2。7/26【マネーの価格三態と政府の不作為】で説明したように、需要不足が解消するまで政府が負債を増やすことこそ望ましい政策なのです。

現代の通貨制度と財政政策については、4/2【信用創造は悪魔との取引か】で触れた、メフィストフェレスが紙幣を大量発行して好景気を実現する『ファウスト』のエピソードなどを使って詳しく説明する予定なのでご期待ください。

金(かね)と魔術―『ファウスト』と近代経済 (叢書・ウニベルシタス)

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9/8【国債がデフォルトしないことの常識的な説明】に続きます。

*1:ただし、これは最終手段です。現実にはリスクフリー金利で市場から必要なだけ調達します。

*2:サウジアラビアが自国用の原油不足を恐れるようなものです。