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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

医療費が増える理由②:相対価格の上昇

社会保障

3/2【医療費が増える理由①:エンゲルの裏法則】の続きです。

医療費が増える理由の二つ目が、価格上昇率が他の財・サービスに比べて高いこと(→相対価格の上昇)です。これは、医療が機械化や技術革新による大量生産・コストダウンが困難なサービスであるためです。

生産性上昇は機械化や技術革新によって生じますが、これは対人サービス業では原理的に困難です(散髪の生産性を100倍にする≒客1人に要する時間を1/100にすることや、演奏家が単位時間に同じ曲を演奏する回数を100倍にすることは不可能です)。そのため、製造業の製品(財)に比べると、サービスの価格は生産性上昇によるコストダウンが乏しい分、相対的に高くなっていきます。

製造業の生産性が高い国ではサービスが相対的に割高になるメカニズムは、4/25【生産性以上の賃金を得られて何が悪いか】で詳しく説明しています。

アメリカの個人消費を例に見ると、価格上昇率は確かに“耐久財<非耐久財<サービス”となっています。

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個人消費支出の総合価格指数(PCE)に対する比で見ると、相対的に値下がりする耐久財と、相対的に値上がりするサービスの対比が鮮明です。

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サービスの中でも特に相対価格の上昇が大きいのがヘルスケア(医療)と教育です。これらは特に高品質が要求されるため、省力化によるコストダウンが難しいことが根本にあります*1

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金額=価格×数量なので、相対価格が上昇する医療への支出割合(医療費の対GDP比)は上昇するのが当然と言うことになります。上昇を抑制することは、医療の数量削減あるいは質の低下を意味します。

もちろん、医療費の対GDP比が上昇していけば、いずれは「医療費を増やすためには他の財・サービスへの支出を減らさなければならない」状況が訪れますが、現時点ではその選択をする必要はありません。いたずらに医療費増加を問題視して医療の質を低下させることは避けるべきでしょう。

The Cost Disease: Why Computers Get Cheaper and Health Care Doesn't

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*1:ただし、1980年代以降のアメリカの教育費高騰は、金融ブームと連動した「学位インフレ」の影響が大きいと考えられます。3/2【HBSのクリステンセン教授がMBAビジネスの終わりの始まりを予言】で説明しています。