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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「量的・質的金融緩和」の現状確認

アベノミクス

日本銀行が当座預金残高を47兆円(2012年末)から175兆円(14年末)に増やして2%のインフレ達成を図る「量的質的金融緩和」を4月4日に決定してから5か月半が経過しました。そこで、本日、日銀から公表された「資金循環」統計などに基づき、金融緩和の現状を確認してみます。

8/28【S&Pのレポート:銀行は超過準備を貸し出せない】で説明したように、量的緩和とは、銀行等が保有する国債を日銀に売却した代金が、日銀当座預金に0.1%の利息が付く日銀預け金として積み上がる、というものです*1。したがって、日銀のバランスシートでは、資産の国債が+X兆円、負債の日銀預け金が+X兆円、銀行等のバランスシートでは、資産の国債が-X兆円、日銀預け金が+X兆円となります。下表からは、ほぼその通りになっていることが確認できます。

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国内銀行の資産の内訳を別の統計で7月まで見ると、国債から預け金へのシフト以外には顕著な変化が生じていないことが確認できます。

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次に金利動向ですが、「量的・質的金融緩和」後に跳ね上がった長期国債利回りは再低下して落ち着きを取り戻しています。実体経済への影響が大きい銀行の貸出金利には上昇傾向は見られません。金融緩和が金利チャンネルを通じて実体経済に与えた影響はほとんど無いことになります。

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インフレ予想への影響も限定的です。ブレイク・イーブン・インフレ率は緩和直後にはインフレ目標の2%に跳ね上がったものの、その後は下落しており、市場参加者が目標達成を織り込んでいないことを示しています*2

毒にも薬にもなっていないような「量的・質的金融緩和」ですが、為替レートは1ドル=100円弱をキープしており、景気への大きなプラス効果が期待できます(7/2【「脱・プラザ合意」が日本経済を復活させる】を参照)。

もっとも、円高是正は「量的・質的金融緩和」によるものというより、安倍総理大臣の円高是正への強い意思の反映と思われます。プラザ合意のように、政治が為替レートの大きな水準変化を引き起こすことは珍しくありません。1993~95年の円高が反転したのも、95年の日米協調介入によってクリントン政権の円高誘導路線の転換が明確になったことが理由でした(5/17【NHK『メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオⅡ』が見落とした1993年のミッドウェイ】を参照)。近年の円相場の動きが当時と酷似していることは、円高是正が政治的要因によるものという見方を裏付けます。

「量的・質的金融緩和」には、政治的要因による円高是正(1ドル=80円→100円弱)をさらに進めるだけの効果はなかった、というのが妥当な評価でしょう。

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鉱工業指数からは、日本経済は上向き基調にあるものの、完全復調には程遠いことが確認できます。来年4月から消費税率を引き上げるのであれば、「5兆円の経済対策」などとケチなことは言わず、1ドル=110円の達成や賃上げの実現など、万全の対策を取ってもらいたいものです(5/29【賃上げは従業員のためならず】を参照)。

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*1:利息は超過準備に付きます。

*2:消費税率引き上げによるインフレを含めても1%強にとどまっている。