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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

安倍首相の賃上げ要請とクールビズ作戦

アベノミクス

安倍総理大臣が本日の「経済の好循環実現に向けた政労使会議」で、「賃金・雇用の拡大」を企業側に要請しました。

日本経済が停滞から脱しきれない主因の一つは、企業収益増加が賃上げ→家計消費の安定的増加につながらない*1ことです。賃上げに積極的な安倍首相は、賃上げがアベノミクスの成否のカギを握っていることをよく理解しているようです。仮に来年度に3%の賃上げが行われれば、日本経済は消費税率の3%ポイントの引き上げを無事に乗り切る可能性が高まります。(詳しくは過去記事を参照)

賃金が上がらなかった理由については、首都大学東京の脇田成教授の説明が的確です。

[1] 大企業セクターで賃金をなぜ上げないのか

− 筆者の暫定的な解答は、長期停滞を受けた労働市場全体の状況の悪化ならびに、上げるべきではないとする(誤った)考え方が優勢であったためです。

[2] 中小企業で賃金がなぜ上がらないのか

− この問題は中小企業全体の業績の悪化のためであり、大企業セクターの影響下でジレンマ状況となっています。

個別の企業にとって賃金・利子の上昇や配当の家計所得の増加は、何ら企業利潤の持続に寄与しません。むしろ阻害要因です。しかしマクロ経済では違います。家計所得の増加は消費を高めて、持続的な成長を可能にします。

残念ながら部分均衡的な考え方をマクロ経済に当てはめ、これまで専ら企業利潤を高める動きが近年では賞賛されてきました。

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過剰債務が解消し、手元現預金が潤沢であるにもかかわらず、大企業が賃上げに消極的であることが、日本経済全体の持続的成長を阻害しているわけです。

企業が賃上げに消極的なのは、自社だけが賃上げすればコスト競争力が低下して「負け組」になってしまうからです。しかし、全企業が同時に同率で賃上げすれば、コスト競争力は不変のため、賃上げを渋る理由はなくなります*2。「みんなで賃上げすれば怖くない」ということです。

とはいえ、日本は独裁国家ではないので、安倍首相には大企業に賃上げを強要する権限はありません。そこでヒントになるのが、近年の日本で企業行動を一挙に変化させることに成功したクールビズです。猛暑の日本の夏に冷涼なヨーロッパの服装をするのは馬鹿馬鹿しいことですが、1人だけ・1社だけクールビズをすれば非常識とされてしまうため、その馬鹿馬鹿しい状態が長年に渡って続いてきたわけです。

ところが、「変人*3」こと小泉首相自らクールビズを積極的に推進し、全国の政治家と公務員(お上)もクールビズをしたことから、企業も右へ倣えで一挙にクールビズが定着しました。「先ず隗より始めよ」と公共部門が先行したことで服装コードの臨界点超えが生じ、民間部門の相転移が引き起こされたと言えるでしょう。 

これを参考にすると、大企業の賃上げを誘発するには、公務員給与の引き上げが有効ということになります*4。通常は民間給与を基準に公務員給与が決められますが、非常時なので民間の指標になるように公務員給与を先に決めてしまうわけです。「お上に続け」「公務員給与が高いと文句を言うなら自社の給与を上げろ」ということです。公務員の人件費は約25兆円なので、3%引き上げても消費税増税分の約1割しか増えません。

これを呼び水にして経済を好循環に導けるのであれば安いものだと思いますが、どうでしょうか。

*1:2000年代前半に日本銀行が唱えた「ダム論」です。

*2:細かい要因はここでは無視します。

*3:もちろん、いい意味です。

*4:クールビズよりも潜在的抵抗が強いことは確かですが。