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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

日本は欧米のATM?

現代の金融制度を誤ったフレームで捉えていると思われる記事がありました。

FRBマネーは紙切れでいくらでも刷れるが、しょせんはあぶく銭だ。日本が出すのは本物のカネであり、国民の勤勉な労働の産物である。

FRBマネーは紙切れであり、量的緩和の縮小とともに消え去るのに対し、日本のカネは家計貯蓄という本物のマネーである。

FRBが量的緩和を縮小しようとする中で動揺する米欧市場は何よりもジャパン・マネーを欲しがる。<中略>デフレを長引かせる日本の消費増税は米欧にとって死活的利益なのである。

「家計貯蓄は本物のカネ」という記述からは、この記事の筆者が、銀行を下の記述*1のような金融仲介業と認識していることが伺えます。

銀行の仕事は、資金に余裕がある人々の貯蓄を預金として集め、それを資金が不足している家計や企業に貸し出すことである。

しかしながら、 これは現代の銀行には当てはまりません。預金は銀行貸出の原資ではなく、貸出によって無*2から創造されるものです(信用創造)。家計の預金も、元を辿れば銀行が企業などに無から創造して貸し付けたものであり、それが給与支払いなどで企業から家計に移転したものです。何を以て「本物のカネ/あぶく銭」と区別しているのか分かりませんが、無から創造されたことにおいては、家計の預金もFRBマネー量的緩和によって積み上がったFedの準備預金のことを指すと思われます)も変わりません

量的緩和を縮小すればFedの超過準備(FRBマネー)は消えますが、引き換えにFedが買い入れてきた国債等を売却するので、金融機関の資産の中身が入れ替わるだけです。資産規模は変化しません。

そもそも、自国通貨と中央銀行を持つ政府はリスクフリー金利でいくらでも銀行から資金調達できるので、日本の家計貯蓄に頼る必要はありません。

家計資産の裏側は他部門の負債なので、家計資産が増えるためには他部門が負債を増やす必要があります。国内企業は1990年代後半から負債圧縮を続けているので、家計資産が増えたのは政府と海外が負債を増やしたためです。

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日本の超低金利は国内の投資機会の減少を意味するので、海外投資を増やすのが経済合理的行動です。欧米に資金を「献上」しているわけではありません。むしろ、円高リスクのために海外投資に消極的だったことが、割高な円為替レートを定着させた元凶と言えます。

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活発な海外投資はデフレに陥った90年代後半から続いており、リーマンショック後の現象ではありません。また、欧米にとっては「日本経済の回復→対日輸出増加」こそ利益です。陰謀論に走り過ぎではないでしょうか。

おまけに半年前の記事も検証します。

現在、日銀は金融機関が日銀から供給を受ける資金に0.1%の金利を付けているが、その金利をマイナスにすればよい。銀行は日銀での当座預金で寝かしていれば、金利をとられるので、一般向け貸し出し増に駆り立てられるだろう。

当座預金のマイナス金利による損失を埋めるために、信用リスクの高い貸出を増やすことは、銀行にとって合理的行動ではありません。それよりも確実な

  1. 手数料を引き上げる
  2. 預金金利を引き下げる
  3. 当座預金を現金化して銀行の金庫に保管する→日銀が追加供給
  4. 当座預金を他の金融機関に押し付ける(ホットポテト)→短期金融市場が混乱

などの行動を取るでしょう。1.と2.は預金者の損失であり、景気にマイナスです。3.と4.は中央銀行の日々の金融調節を難しくします。日銀だけでなく、FedやECBも当座預金に金利を付けていることには合理的理由があります。

現代の金融制度に関する誤解は尽きないようです。

*1:ある高等学校社会科の副読本より。

*2:英語ではout of nothing, out of thin air, ex nihiloなどと表現されます。

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