Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

デフレ不況からの確実な脱却:ニューディール・高橋財政・アベノミクス

9/23【デフレ不況脱却途上における財政引き締めのインパクト:1937~38年の景気後退】の続きです。

1933年3月に大統領に就任したルーズベルトは、直後に“Bank Holiday”を宣言して銀行パニックを鎮静化させると、4月には金本位制の停止(民間の金保有を禁止)に踏み切りました。すると、インフレ率と生産は急上昇に転じ、恐慌の大底を脱しました。金本位制停止が大恐慌からの脱却のポイントだったことは、エコノミストのコンセンサスになっています。

f:id:prof_nemuro:20130925143016g:plain

問題は、アメリカ国民が金本位制停止からマネー増加→インフレ転換を連想したことが急速な回復の原因だったのかです。現金や準備預金、銀行預金の増加ペースが速まるのは1934年以降であり、インフレ率や生産とはタイムラグがあります。

f:id:prof_nemuro:20130925150400g:plain

f:id:prof_nemuro:20130925150359g:plain

準備預金と銀行預金の急増は、34年2月に財務省が金価格を1.7倍に引き上げて金証券を大量発行するようになったためです*1アメリカ人の多くがこの政策を33年4月の段階で予想したとは考えられないので、マネーの増加の連想がインフレ率と生産の急反転の原因、という説も怪しくなります。

f:id:prof_nemuro:20130926064926g:plain

f:id:prof_nemuro:20130925152345g:plain

インフレ率や生産の急上昇とタイミングが完全に一致するのは為替レートです。金本位制停止→為替レート急落*2と同時期に、景気は底離れしています。

f:id:prof_nemuro:20130925155204g:plain

6/24【10年前の岩田・黒田論法と「次元の違う金融緩和」の弱点検証】では、「長期国債買いオペ増→超過準備増加→“期待”が転換」の岩田説と、為替レート減価を重視する吉川説を比べましたが、アメリカの大恐慌については吉川説が当てはまると言えるでしょう。Temin and Wigmore (1990) “The End of One Big Deflation”によると、ドル安→農産物価格上昇→農業収入増加(1933年には生産活動従事者の22%は農業)に決定的効果がありました。

The key to this change was Roosevelt's devalutaion of the dollar and the resulting rise in farm prices and incomes. … The devalution of the dollar was the single biggest signal that the iron grip of the gold standard had been broken. 

中央銀行の資産買い入れ増加予想ではなく為替レート減価が景気反転の切っ掛けだったことは、高橋是清のリフレ政策(いわゆる高橋財政)にも共通します(7/28【円安抜きの高橋是清なんて…】)。日米ともに「為替レート減価→財政拡張」の合わせ技、すなわち「期待」ではなく「現実」の価格変化と有効需要創出が恐慌脱却の決め手だったということです。為替レート減価が第一の矢、財政出動が第二の矢だったわけです。

現在の日本では、円高是正は進んだものの、製造業の国内回帰を進めるには十分とは言えません(6/4【白物家電生産の国内回帰の重大な意味】)。財政では、8兆円の家計負担が発生する消費税率引き上げが来年4月に予定されています。

安倍総理大臣は高橋是清やルーズベルトに続けるでしょうか。

大恐慌における金融政策のレジーム転換と量的・質的金融緩和の比較】に続く。


FDR Ends Gold Standard in 1933 - YouTube

(ドル高→農業への打撃については1:44~

*1:1オンス=20.67ドル→35ドル

*2:金本位制を採用する国の間では、金価格を介して為替レートが固定される。