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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

少子化を招くリスク/リターン思考

人口・少子化

9/15【シンガポールの結婚難事情】と同じく、シンガポールのChannel NewsAsiaで低出生率について専門家に聞く番組が配信されています。

シンガポールでは1980年代から政府が結婚・出産のインセンティブを拡大していますが、晩婚化・未婚化・少子化に目立った効果は上がっていません(2:11~, 16:02~)。専門家(Teo You Yenn)は、低出生率は日本、韓国、台湾、香港にも共通しており、文化的要因も考慮する必要があると語っています(3:50~)。低出生率は個人と社会・国家の関係を反映したものというTeoの分析(10:13~)は日本にも参考になります。

出生率の文化要因として疑われるのが、新古典派経済学(≒新自由主義)的思想、すなわち、経済成長・所得増の優先や、リスク/リターン思考(⇔アニマルスピリット)の浸透です。

所得増を優先すれば、多大な費用と時間を必要とする育児は「損失」に他なりませんし、育児の結果をリスク/リターン分析することはほぼ不可能です(リスクと言うより不確実性)。なので、計算ずくで行動する人(高所得者に多い)ほど、結婚したとしても出産に消極的になりがちです。

It does not consider that prioritisation of growth might lead people to feel greater insecurity and thereby compel cultures of self-centredness….

番組の12:54~で紹介されているDINK(Double Income No Kids)が出産を避ける理由は、これを裏付けています。

  • この世の中で子供を持つ意欲が湧かない
  • 貯蓄を優先(早期退職や経済的ゆとりのため)
  • 子供が悪人に育つ可能性
  • 時間不足
  • 育児費用の高騰
  • ストレスの多い学校制度

自己利益を重視・社会全体の利益を軽視する新古典派的思想の浸透*1→「他人の育児の費用を負担するのは真っ平御免」→不十分な公的・社会的育児サポート体制→育児に優しくない社会、も東アジアの低出生国に共通します。*2

The narrow criteria for qualifying for each scheme and the differentiated benefits compel people to think in terms of “What’s in it for me here?” or alternately, “Why don’t I get that?” It orients people towards individual benefits and narrow self-interests

Instead, we develop zero-sum mentalities — fearing that what benefits others is costly to us. In these ways, the principle of differentiated deservedness that continues to be embedded within marriage and parenthood measures affects us all.

一方、北欧では、子供は将来の社会の担い手→親以外の大人も無関係ではない→他人の育児に協力するのが当然→充実した公的・社会的育児サポート体制が、先進国の中では比較的高い出生率を支えていると考えられています。

As such, it is our collective interest and shared responsibility to enable children’s care and growth. Mothers should not be the only ones with either the responsibility or privilege to raise children. Instead, a whole range of adults — fathers, teachers, grandparents, babysitters — should be acknowledged and supported as legitimate and important caregivers.

In countries such as Sweden and Norway, the implementation of this child-centred approach has been in the form of publicly-funded leave for parents regardless of gender and marital status. There is also publicly-funded support for a range of institutional and home-based care for children regardless of their parents’ socioeconomic and employment status.

経済成長と利益追求の過度の追求が人口減少による経済の縮小を招くわけですが、社会全体の利益の軽視を続ければ、社会が(人口減少によって)崩壊に向かうのは必然です。将来の経済縮小を避けるためには、人口減少を避ける←出生率を引き上げる←育児を犠牲にした個々の利益追求にブレーキを掛けることが必要です。

これを実行できるのは政府だけなのですが、日本が北欧モデルを採用する可能性は極めて低そうです。

 

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おまけ:番組の最後で紹介されている音楽ビデオ


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*1:サッチャー元英首相の有名な言葉が「社会などというものは存在しない」「存在するのは個々の男女」です。

*2:新自由主義の米英は比較的高出生率ですが、これには別の文化的要因が関係しています。