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医療費が増える理由③:技術進歩と高齢化

下図は、医療費の増加を要因分解したものです。 (a)相対価格上昇と(b)量的増加が医療固有の要因です。相対価格上昇については【医療費が増える理由②:相対価格の上昇】で説明済みなので、今回は量的増加についてです。

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アメリカの個人医療費(Personal health care expenditures)分析によると、1990年代以降の相対価格上昇*1は年率+1%、量的増加(intensity growth)は年率+2%程度となっています。

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1人当たりの量的増加はさらに、①受療率*2の上昇、②高齢化、③技術進歩に分解できます。

①は、公的保険制度の整備や自己負担の軽減等により、医療へのアクセスが増大することです。日本では、福祉元年の1973年に老人医療費支給制度が創設(→無料化)され、老人医療費の急増を招きました*3

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②は、加齢とともに医療費が増えることから生じます。医療の内容がまったく同じでも、人口構成が高齢化すると、総医療費と1人当たり医療費は増加します。2010年度の1人当たり国民医療費は29.2万円ですが、2020年の人口構成*4なら33.1万円、2050年なら40.8万円になります。人口高齢化による医療費増加率は、現在の日本では年率+1%強です。2000年代前半のアメリカもほぼ同程度でした。

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③は、技術進歩によって、受けられる医療の種類が増えることを意味します。結核に対する抗生物質がその一例です。かつては不治の病だった白血病も、近年では治療が可能になっています(例:吉井怜)。新技術の登場=新たな費用発生なので、これが供給側における医療費増加要因になります。医療技術進歩→高齢化→医療増加の間接経路も存在します。

健康長寿を求める人々の欲求(需要)と、それに応える医療技術の進歩(供給)が、医療費増加の両輪と言うことです。

totb.hatenablog.com

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*1:一般物価にはGDPデフレータを用いている。

*2:1日に人口の何パーセントが受診・入院するかを示す。

*3:医療機関の老人サロン化・無駄な医療費増加などの批判の根源。

*4:国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口(平成24年1月推計)による。