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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

名目GDPターゲットへの相反する見解

中央銀行の金融政策は単純なルールに従うべき、とする主張があります。

1980年前後には、マネタリストが主張するマネリーベース(あるいはマネーサプライ)ターゲットが米欧で実施されましたが、金利の乱高下を招いて従来の短期金利コントロールに戻されました。

“Great Moderation”期にはインフレターゲットが流行しましたが、金融バブルの膨張と崩壊後に対処できなかったことから、その限界が示されました。

しかしながら、単純なルールを求める一部の経済学者の願望は根強いようで、近年では名目GDPターゲットが支持を集めています。

ウッドフォード氏は、中央銀行が目標とすべき社会厚生を、現在から将来にわたるインフレ率と国内総生産の値に依存する2次関数として表現し、その関数を、人々の期待を考慮しつつ最大化するような金融政策を導出した。近年では、自身の研究結果に基づき、中央銀行の政策目標を物価指数ではなく名目国内総生産にせよと主張し話題となった。

2010年のAmerican Economic Review誌における彼の論文(Robustly optimal monetary policy with near-rational expectations)によれば、…毎年の政策金利をその年および過去のGDP(国内総生産)ギャップの増加率や物価上昇率の値に応じて1次関数的に変える非常にシンプルなルールの採用が望ましいことが分かった。

これに対して、セントルイス連銀のエコノミストが、名目GDPターゲットが採用されなかった・採用されないであろう理由を説明しています。(強調は引用者)

So what prevents the Fed and other central banks from adopting nominal GDP targeting? Again, there are a number of reasons, but an important and sufficient reason is that nominal GDP targeting requires policymakers to be indifferent about the composition of nominal GDP growth between inflation and the growth of real output, and, in general, they are not. For example, let’s assume the target is 5 percent and nominal GDP is growing at 6 percent. Would policymakers react the same if the composition was 1 percent inflation and 5 percent real growth, or 5 percent inflation and 1 percent real growth? It seems unlikely. … The economy is too complex to be summarized by a single rule. Economies are constantly changing in ways difficult to explain after the fact and nearly impossible to predict. Consequently, policymakers seem destined to rely on discretion rather than rules.

  • ターゲットが5%で名目成長率6%の時、ルールに従うと引き締め政策が取られるが、「インフレ率1%・実質成長率5%」と「インフレ率5%・実質成長率1%」では、適切な金融政策は異なるはず。
  • 労働市場、金融市場、GDPの構成(消費と投資のバランス)、世界経済の動向など、様々な要因を考慮する必要がある。

現実の経済はシンプルなルールにまとめられるような単純なものではない、というのが根本的理由です。ルールは有用ではあるが最終的には裁量になるということです。

単純化の欲求に憑りつかれた一部の経済学者と中銀関係者のどちらが現実を正しく認識しているでしょうか?