Think outside the box

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頭のいい人ほど厄介な理由

まずは次の問題を考えてください。

下表は、発疹に肌クリームが効くかどうかの治験の結果です。このクリームには肌の状態を改善する効果があるでしょうか。それとも逆効果でしょうか。

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クリームを使わなかった場合、改善は悪化の約5倍ですが、使用すると約3倍にとどまっています。従って、クリームは改善には逆効果と判断できます。

国民のこのようなnumerecy(数学的リテラシー)が向上すれば、地球温暖化や銃規制(アメリカの場合)などの政治課題に関してエビデンスに基づく冷静な議論が可能になると思ってしまいがちですが、現実は異なるようです。

www.culturalcognition.net

下は著者による解説記事です。

www.culturalcognition.net

実は、上記の肌クリーム治験のデータは、実験者が用意した架空のものです。実験では、肌クリームと銃規制について同じデータ(結果は入れ替えたものを二種類)を被験者群に示し、効果を判断させました(下の左が肌クリーム、右が銃規制)。

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その結果、肌クリームの効能については、リベラル(民主党支持者)と保守(共和党支持者)ともに、numeracyが高くなるほど正答率が高まりました。しかし、銃規制の場合、「銃規制が犯罪を減らした」という問題の正答率はリベラルは高いが保守は低く、逆の「銃規制が犯罪を増やした」という問題の正答率はリベラルは低いが保守は高くなりました(論文の18ページ・図6、解説記事の上から4つ目の図)。 

肌クリームも銃規制もまったく同じデータなので、被験者が客観的であれば、肌クリームの正答率と銃規制の正答率は同じになるはずです。これから、自分の価値観・世界観が係ると、人間は客観的な判断をしなくなる、ということが示唆されます。リベラルの場合、「銃規制→犯罪減少」と読み取るバイアスが働くため、「増加」が正解のデータでは正答率が低下してしまうわけです。

この調査では、numeracyが高くなるほどバイアスも大きくなることが示されています。Numeracyが高い人は、その能力を客観的判断ではなく、自分の思想の正当化に用いていることが示唆されます。

The result suggests instead an alternative hypothesis: that people are using their science comprehension capacity to reinforce their commitment to the positions on risk that predominate in their affinity groups, consistent with cultural cognition.

この論文はそこまで踏み込んではいませんが、リテラシーの高い人ほど、客観的データから自説を支持する論理を構築する傾向がある、というインプリケーションが得られます。自説が科学的に正しければ結果オーライですが、正しくなければ、誤った論理のでっち上げです。

天動説がその典型例です。観測データが蓄積されてくると、天動説では説明困難な天体の動きが見つかりましたが、その時々の秀才たちが、様々な補正を施してモデルのつじつまを合わせました。天動説という壮大な虚構を正当化するために、秀才たちが千年以上にわたって努力を重ねていたわけです。

日本のリフレ政策や消費税率引き上げをめぐる論争でも、「頭のいい人たち」が結論先にありきの珍妙な論理を展開しています。下のグラフから「国債の過剰発行が民間の資金需要を減退させている」と読み取ったり、賃下げの奨励など、例には事欠きません。

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残念ですが、頭のいい人たちに誤りを認めさせることは極めて困難なようです。

まあ、この記事自体が、バイアスの産物の誤りという可能性もあるのですが。*1

grist.org

www.alternet.org

*1:頭がいいわけではないので、可能性は低いはずですが。