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ナチュラル走法のメカニクス

年末年始に駅伝のテレビ放送が続いたためか、関連記事へのアクセスが増えているので、新たな記事を書きました。【健康ランニングのtips④:膝は曲げると上がる】のささらに詳しい説明です。

人の脚は、股関節を支点とする振り子(上腿)に膝関節を支点とする振り子(下腿)と重り(足)を連結した二重振り子の構造をしています。前進するためには、股関節と膝関節を回転させて振り子を前に振る必要があります。

下の片脚の1サイクルの模式図を使って説明します。①→②→③→④→⑤→①の順に時間が経過します。進行方向は左→右です。

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①は着地の瞬間です。膝を軽く曲げ、下腿を地面に垂直に着地します。

着地した足が地面に固着したまま体が前方に流れるので、膝と脚の裏側の筋肉が伸ばされます。②でアキレス腱が縮んで地面から足が離れ、体が宙に浮きます。

足が跳ね上がり、膝が軽く曲がった③における脚の動かし方が効率的なランニングの鍵を握ります。脚を「蝶番で連結された2本の棒にゴムひも(紫色の点線)を取り付けたもの」にたとえると、

①→②:蝶番が開いてゴムひもが伸びる=ハムストリングスと膝が伸びる

③:伸ばされたゴムひもが縮んで蝶番が閉じる=ハムストリングスを縮めて膝を曲げる

という動きが自然であることが分かります。二枚貝が貝柱を収縮させて殻を閉じる姿をイメージすればよいでしょう。貝柱=ハムストリングス、両殻=上腿と下腿です。

脚の付け根(支点)は固定されているので、ゴムひもが勢いよく縮むと、

  • 踵が上(尻に向かう)
  • 膝が前

へと膝関節と股関節が同時に回転します(③のオレンジ色の矢印)。

膝が十分に曲がった状態が④です。下腿の上への回転は止まりますが、上腿の前への回転は続き、膝が上がります(④の黄緑色の矢印)。この動きが下腿に伝わり、続いて下腿が膝関節から前に回転します(④の水色の矢印)。

⑤の状態になるので、そのまま足を下ろして①のように着地します(高所から落下するような意識で)。

②で地面を強く蹴って体を宙に浮かせ、太腿の前の筋肉を使って足を前に振り出す(③の赤矢印)、とイメージしている人がいますが、そうではなく、ハムストリングスを縮めて膝をコンパクトに畳み、それによって股関節と膝関節を素早く回転させ、足を前に移動させるのです。

  1. 着地:アキレス腱が伸びる
  2. 着地中:ハムストリングスが伸びる(膝が伸びる)
  3. 離地:アキレス腱が縮む→体が宙に浮く・足が跳ね上がって膝が軽く曲がる
  4. 空中:ハムストリングスを縮める(膝を曲げる)→股関節と膝関節が回転

アキレス腱とハムストリングスの伸縮がランニングの要です。

このフォームの体得には、緩い下り坂を走ることが効果的です。下りでは脚の回転(ケイデンス)を速められるので、膝関節の素早い曲げ伸ばしの練習になります。また、下り坂では自然に「前方に落下」するので、地面を蹴ることよりもソフトな着地に注意が向くことも利点です。

足裏のボール部で衝撃を吸収するように着地→自然に体がバウンド→素早く膝関節を曲げる→股関節が回転→膝関節が回転→着地、という流れです。

平地や上り坂では、前傾することで「前方への落下」を擬似的に作り出します。詳しくは過去記事を参照してください。*1

時速10km強までのスローペースであれば、②で地面を強く蹴る必要がないので、アキレス腱と膝の曲げ伸ばしだけで自然に進む省エネランニングが可能です。足が地面から離れる際に足裏のフォアフット部で地面を軽く押せば、時速10km台後半以上にスピードを上げられます。

*1:前傾→前への倒れ込みを利用しての前進は、ドミノ倒しに似ています。次のドミノに動きを伝える代わりに、落下→アキレス腱のバネでバウンド、で前進します。