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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「性別役割分担」が少子化対策にならない理由

人口・少子化

3週間前の記事ですが、コメントを求められたのでついでに掲載します。批判も多いようですが、この文章に限ればそれほどおかしな内容ではありません。

この原因分析は妥当です。*1

実はこうした「性別役割分担」は、哺乳動物の一員である人間にとって、きわめて自然なものなのです。妊娠、出産、育児は圧倒的に女性の方に負担がかかりますから、生活の糧をかせぐ仕事は男性が主役となるのが合理的です。ことに人間の女性は出産可能期間が限られていますから、その時期の女性を家庭外の仕事にかり出してしまうと、出生率は激減するのが当然です。

しかし、解決法はイデオロギーを抜きにしても現実的ではありません。

実は、解決法そのものはいたって単純、簡単です。日本の若い男女の大多数がしかるべき年齢のうちに結婚し、2、3人の子供を生み育てるようになれば、それで解決です。

実際、昭和50年頃まではそれが普通だったのです。<中略>

もしこのあたり前が、もう一度あたり前になれば、人口減少問題はたちまち解決するはずです。

現在の経済社会が、「人間にとって自然」な性別役割分担を困難にしているためです。

性別役割分担が合理的なのは、男女それぞれに生物学的特質に合った仕事が存在している場合です。

男に適しているのは、

  • 戦闘(対人間)
  • 狩猟(対動物)
  • 力仕事
  • 危険を伴う仕事*2
  • 遠出する仕事
  • 道具・機械の製作・操作

などですが、これらは過去数十年で機械・コンピュータへの置き換えが急速に進んでいる分野です(機械が男の労働価値を低下させた)。そのため、肉体労働のような性差のない頭脳労働や、機械では代替できない(一般的に女が得意とする)対人サービスが経済に占める比重が相対的に増大しています。

このことは、性別役割分担よりも、夫婦共働きが合理的になっている(男だけでは十分な生活の糧を稼げない)ことを意味します。経済全体でも、女を労働市場から退出させることはGDPの縮小につながるので政策的に取り得ないでしょう。

問題の本質は、女が仕事(ワーク)と妊娠・出産・育児(ライフ)の「1か0かの選択」を迫られることです。

出産可能期間はキャリア形成でも重要な期間なので、ライフの選択に躊躇する女が多くなるのは必然です。なので、以前の大相撲の公傷制度のように、ワークの一時中断による損失が生じないような制度の義務化が必要でしょう。妊娠・出産・育児を「公傷」と見做すわけです。

オランダのように、パートタイム労働がフルタイム労働に比べて不利にならない制度も、ワークからライフへの転換に有効と考えられます。「1か0」ではなく、「0.7と0.3」や「0.4と0.6」のようなファジーな選択が可能になるように、社会制度を再構築するわけです。

The authors assumed that part-time work was less desirable but ultimately confirmed that Dutch women don't want to spend more time at work. The NIS News Bulletin interpreted the results of the study as: "Attempts to get more women working full-time are doomed to failure because nobody has a desire for this. Both the women themselves and their partners and employers are satisfied with the Dutch part-time culture for women."

When I talk to women who spend half the week doing what they want—playing sports, planting gardens, doing art projects, hanging out with their children, volunteering, and meeting their family friends—I think, yes, that sounds wonderful. […] Dutch psychologist Ellen de Bruin explains that key to a Dutch woman's happiness is her sense of personal freedom and a good work-life balance.

妊娠・出産を男女同一化することは生物学的に不可能なので、働き方を男女で同一化しないことが、ワーク・ライフ・バランスには必要です。働き方を男女同一化すると、女が妊娠・出産しない、という形で男と同一化してしまいます。

もっとも、北欧やオランダのような改革を実行しても、出生率引き上げには不十分と考えられます。出生率低下の主因は、男女の社会的地位の同等化が引き起こしたミスマッチ(女の高望み)だからです。

昔の「あたり前」で解決するほど、少子化対策は簡単ではないのです。

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*1:「性別役割分担は哺乳類にとって自然ではない」という批判がありますが、ここで述べられているのは「育児は女が主役、男が補佐役」という当たり前のことです。

*2:女が死ぬと集団の出生率の低下につながりますが、男が死んでも別の男で代替できるので、出生率は低下しません。なので、集団の出生率をキープするためには、死ぬ危険の高い仕事は男に任せることが合理的です。