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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

寡頭制への移行は必然なのか

アメリカのベンチャーキャピタリストのパーキンスが、WSJへの寄稿で「リッチ1%への99%の敵意」をナチス政権下のドイツ人のユダヤ人憎悪にたとえたことが物議を醸しています。

その後に出演したブルームバーグTVでは、「クリスタル・ナハト(水晶の夜)」という言葉は不適切だったと謝罪したものの、主張の正当性を改めて訴えています。

[5:33~]

… I did not originally come from the one percent. I grew up as one of the 99%. I am your classical self-made man, if you will. […] We have ever-increasing regulations, higher costs, i think caused by more government than we need. […] That, in my view, is what is hurting and causing the inequality. I think that the solution is less interference, lower taxes, let the rich do what the rich do, which is get richer. But along the way, they bring everybody else with them. 

  • 貧困や不平等の原因は政府の過剰規制
  • 規制緩和や減税で富裕層がやりたい放題できるようにするべき
  • 富裕層がさらに富むと、残り99%も引き上げられる(trickle down論)

というもので、「努力と才能で成功を掴んだ"self-made man"」と自負する成功者の考え方がよく表れています。

このような成功者に限らず、多くの人は、富を獲得する過程を、「広大な砂浜に各人が散らばって潮干狩りする」ようにイメージしているようです。集めた貝の量が努力と才能(掘る巧みさや貝の分布を見抜く目)に比例するように、巨額の富も努力と才能に比例している(→なので、批判されるのは筋違い)というわけです。

しかし、【 鬱病を増やす「神の見えざる手」】で述べたように、富の分布は努力や才能以外の運に相当程度左右されていると考えられます。太陽系が誕生する時、当初は薄く散らばっていたガスや塵が、徐々に引き合って最終的には惑星へと巨大化したように、何らかの「ゆらぎ(運)」によってある人に富が集まると、富の間に働く「引力」によって「富が富を呼ぶ」フィードバックが働き、資産格差が拡大していくというのが実態に近いでしょう。(お金は寂しがり屋です。)

成功には運の要素が大きいことは、所得格差が拡大する前の1970年代にレスター・サローも指摘しています。

不平等を生み出すもの

不平等を生み出すもの

でたらめ歩きは、非常にかたよった富の分布をもたらす過程であり、それは個人の能力が正規分布であろうが、経済が最初平等な状態から出発しようが関係ない。<中略>ここで強調すべきことは、でたらめ歩きには平等化の原理がないことだ。<中略>つまり、富の所有者はもっている以上のものを失うことはありえないが、もっているものを何倍にもすることはできる。

おなじ企業家的才能をもっている人々のあいだでも、不規則で無作為のくじびきが行われている。かれらの集団全体としての期待収益率は存在するが、この平均収益率の周辺には、まことにさまざまな結果が分散している。企業家的才能は、くじに加わるための必要条件ではあるが、それはいっきょに富を形成するための十分条件ではない。

とにかく、最近の金融市場に関する研究が発見した、正規分布でないでたらめ歩きが、富の生成過程の中心にあるようだ。同程度のリスクと企業家的能力をもつ者のあいだで、無作為にとるくじが行われている。どのようなくじであっても、たとえ当たる確率が非常に小さいものでも、誰かがかならず当たりくじをひく。<中略>でたらめ歩きには、富の分配状況がいったん不平等になったときに、平等化へ向かっていくというフィードバック原理はない。

また、エマニュエル・トッドは、

経済幻想

経済幻想

初等教育後の教育が量的に大きくなってくると、社会体の均質性は壊される。

社会の「上部」に教養高い階層が存在し、その能力は経済的特権の源泉であり正当化されるものだという考えは、80年代前半のアメリカで強力になった。

と分析しています。

  • 適切な再分配政策がなければ、富はごく一部に集中する
  • 成功者は、幸運が味方した巨額の富を「自分が優れているから」と認識する

だとすれば、民主制から寡頭制に向かうのは歴史の必然なのでしょうか。

 

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