読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「失われた20年」がたった1年で全快しないことに怒る人たち

アベノミクス

 円安不況がやって来る?】の続きです。

円安(円高是正)政策が「誤り」である根拠に、

  • 生産の海外シフトが進んでいるため、円安のプラス効果は乏しい
  • 円安で潤っているのは一部大企業に限られ、それ以外にはコストアップのマイナス

を挙げる論者がいます。

この指摘自体は的を射ていますが、だからと言って1ドル=80円に戻せば、急激な円高が雇用破壊と空洞化を進めた1998年と2008年の繰り返しです。第二・第三のエルピーダが出ても不思議ではありません(【政府と銀行に潰された日本企業の競争力~『不本意な敗戦 エルピーダの戦い』】)。国内生産が増えなければ国内所得は増えませんが、そのためには空洞化の元凶である円高を是正しなければなりません。

給与と物価の動向:現代日本と大恐慌期のアメリカ】等で説明したように、日本経済のシステム不良は、円建て賃金減少という形で表れています。求められるのは円建て賃金を増加トレンドに反転させることですが、その際の制約要因が、グローバル市場における労働コストです。グローバル市場におけるコストアップを避けながら円建て賃金を引き上げるためには、円安が必要です。経済再生の必要条件である円安を、十分条件でないことを理由に否定することは論理の混乱です。

アベノミクスの先行きに暗雲が立ち込めているのは確かでしょうが、それは

  • 消費税率引き上げ
  • 賃上げの遅れ(←利益最大化を至上とする企業行動の変化)
  • エレクトロニクス産業の甚大なダメージ(←主因の一つが過去の円高)
  • 世界経済の停滞 

などが理由であり、円安が元凶ではありません。【ドイツ連銀総裁の「失われた20年」分析】で示したように、円高こそデフレ・賃下げの元凶です。

そもそも、「失われた20年」あるいは「15年デフレ」、加えて千年に一度の大震災で衰弱した日本経済が、たった1年で全快すると考える方がどうかしているでしょう。長期間放置されて衰弱しきった重症患者を短期間に全快させられないことをもって、医者をやぶ医者と決めつけ、治療中止を迫るようなものです。

これは自分の経験ですが、円安反対論者には「輸出産業ばかり優遇されるのはずるい(→俺にも金をよこせ)」というニュアンスを感じることが多々あります*1。特に、規制や日本語の障壁のおかげで国際競争から守られている高所得者(医師、弁護士、大手メディア関係者、いわゆる「有識者」等々)です。

安定した円建て所得があれば、その実質価値を損なうインフレと円安に批判的になるのは理解できますが、それは自分の損得だけ考えて、ワーキングプア等他人の苦境は真剣に考えない我欲に他なりません。

もっとも、我欲の強い利己主義者には「勝ち組」が多いので、必然的に声も大きくなります*2我欲の強い人は我慢強くないことも多いようですが。

製造業に寄生していることを忘れた人たち】に続く。

 

関連記事大恐慌の政策的インプリケーション

*1:輸出産業は優遇されているのではなく、これまでの冷遇(円高放置・空洞化促進)が改められただけです。【空洞化促進政策で失われた所得は300兆円?】を参照。

*2:俺に金をよこせば経済再生する」という我田引水の主張。