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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

製造業に寄生していることを忘れた人たち

「失われた20年」がたった1年で全快しないことに怒る人たち】の続きです。

政府が輸出産業(特に大企業)を優遇していると批判する論者がよく持ち出すのが、「製造業が国内総生産に占める割合は低下した→製造業よりも第三次産業を支援するべき」というロジックです。

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しかしながら、これは第三次産業の発達が、第一次産業第二次産業に立脚したものであることを忘れています。衣食住を含む消費財と生産財を供給する第一次産業第二次産業が活動を止めれば、第三次産業の大部分は存続できません。寄生虫には宿主の健康が必要なのと同じです。

製造業の生産減少が、他産業(サービス業と不動産業を除く)の成長を制約していることは、下のグラフから見て取れます。

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製造業以外の産業を成長させるためには、まずは製造業の回復が必要ということです。

また、日本はエネルギーや食料を輸入に頼らざるを得ませんが、そのためには交換するための輸出品を生産する強固な製造業が不可欠です。競争力のある国内生産基盤を失うことは、物資の不足から途上国並みの生活水準に転落することを意味します。近年では海外からの投資収益が増加していますが、貿易サービス収支の悪化を相殺するには足りません。(下のグラフからは、2011年の大震災の打撃の大きさが伺えます。)

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脱工業化の危険性は、ハジュン・チャンも指摘しています。生活水準向上の原動力が主に製造業における技術進歩であることは、少し考えれば分かりそうなものですが。

世界経済を破綻させる23の嘘

世界経済を破綻させる23の嘘

[p.145]

…これまでにサービスに依存して高レベルの生活水準を達成した国はもちろん、そこそこの生活水準を実現した国さえひとつもないし、これからもないだろう。

…非工業化が必ずしも工業衰退の徴候ではないとしても(その徴候である場合もあるが)、それは長期的には生産性向上と国際収支にマイナスの影響を及ぼす。わたしたちはいま脱工業化時代に生きているのだという神話(根拠のない信念)のせいで、非工業化のマイナス面を無視するようになった政府がたくさんある。

そういえば、「医療・介護で経済成長」という妄想に憑りつかれていた政権もありました(【医療・介護が反・成長産業である理由】を参照)。

脱工業化を叫ぶ論者は第三次産業のエリートに多いのですが、彼らが生み出す「付加価値」についてはエマニュエル・トッドが疑問を呈しています。

経済幻想

経済幻想

[p.154]

1950年から1970年までのメリトクラシーは、自然を支配し、そこから社会全体のために生産性上昇を引き出したのに対して、2000年のメリトクラシーは、社会を支配し、そこから彼ら自身のために所得を引き出すのである。

[p.155]

技術者の産業的価値は、疑いなく、不熟練労働者よりも高い。しかし、生産労働者の経済的有用性を弁護士や高級官僚のそれと直接対比することは出来ない。<中略>フランスから情報技術者を取り除いたとしよう。GDPは、崩壊する。強いフラン好きの会計検査官を島流しにしよう。GDPは上がるだろう。しかし、われわれは、高い所得水準の中に、どの部分が内的な経済的価値から生じるのかあるいは、どの部分が社会から価値を引き出したり、社会的なレントから儲けたりできる能力から派生するものかをほとんど区別できない。

レントに慣れて「何かを得るためには、交換するための何かを作らなければならない」ことを忘れたエリートには困ったものです。

 

追記

技術力・生産力を軽視したソニーの惨状が、日本経済の未来を暗示しています。

「なぜあんなにエレクトロニクスがわからない人をトップにしたのか。ストリンガー氏は工場勤務や製品生産の経験がありません。だから、『モノづくり』は古いと言い出して工場をどんどん閉鎖してしまった。その結果、技術力が格段に落ちていってしまったのです」

 

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