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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

"Single mandate"エリートの暴走が社会を壊す

日本経済の浮上ムードを終焉させかねない消費税率引き上げが1か月後に迫ってきました。

経済に関心を持つ人の多くが理解に苦しんでいるのが、1997年の財政構造改革大失敗の前例があるにもかかわらず、超優秀なはずの財務官僚が、景気失速の危険を無視(軽視)して増税に邁進したことです。

この謎の説明には主に

  1. 財務官僚は超優秀ではない(実はバカ)
  2. 何らかの利権が目当て(たとえば軽減税率適用に関連した)
  3. 日本経済弱体化の指令に従っている(陰謀論

の三通りがあるようですが、どう見ても1.の可能性はなさそうであり、2.の利権もそれほど大きいとは思えません。3.も指令がどこから来ているのかが不明で説得力に欠けます。

それよりも、ケインズが『一般理論』の最後に書いたように、ある種の"idea"が財務官僚を「暴走」させていると考えたほうがよさそうに思えます。

I am sure that the power of vested interests is vastly exaggerated compared with the gradual encroachment of ideas. … But, soon or late, it is ideas, not vested interests, which are dangerous for good or evil.

米欧でも、経済成長率鈍化(secular stagnation)や経済格差の拡大(inequality)など、経済社会の停滞・混迷が深刻化していますが、その根底には、米欧のエリートが、信奉するイデオロギーをごり押ししていることがあります。

米欧のエリートにとっては、自分たちが「正しい」と信じることの実践が重要であり、その結果、大衆の生活がどうなろうと知ったことではないということです。

このような無茶苦茶ぶりの背景にあると考えられるのが、"single mandate"思考(ここでの造語)の蔓延です。

1970年代までは企業経営の主流だったステイクホルダーモデルでは、経営者には様々なステイクホルダーの利害のバランスを取ることが求められましたが、それに取って代わった株主価値最大化モデルでは、株価を高めるためにはステイクホルダーを犠牲にすることが「正しい」とされました。

中央銀行の金融政策でも、インフレ率のコントロールだけに専念する(他の経済指標は無視する)インフレターゲットが流行しました。

ワーク・ライフ・バランスの改善やブラック企業対策が一向に進まないのも、株主価値最大化モデルから派生した「利益追求のためには従業員の生活が犠牲になっても仕方がない」という観念が根強いためでしょう。

全体のバランスは無視して、一つの目標に突き進む」という観念が世界中に広まっていることを考慮すると、財務官僚が消費税率引き上げに異様に熱心だったことも不思議ではありません。財務省設置法で筆頭に定められている「健全な財政の確保」に真剣に取り組んだだけなのでしょう。一般的に、優秀な人ほど仕事に熱心です。

(任務)

第三条  財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保並びに造幣事業及び印刷事業の健全な運営を図ることを任務とする。

田舎侍だった明治維新の立役者に比べると、昭和の軍人たちは偏差値的には優秀だったはずですが、やったことは大日本帝国の崩壊でした。現代日本でも、全体のバランスを考える人が消え(パージされ)、"intelligent fool"が各所で主導権を握っているように思えます。

歴史は繰り返すのでしょうか。

検証経済失政―誰が、何を、なぜ間違えたか

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お笑い大蔵省極秘情報

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