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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

修正を迫られる10年遅れの日本経済観

人間には、これまでのトレンドが続いていくと漠然と考えてしまう 認知バイアスがあります。そのため、大きなトレンド転換が既に起こっているのに、多くの人がその重要性に気付かないまま数年が過ぎている、ということも珍しくありません。

3年ほど前に某金融機関調査部の人に聞いた話ですが、2000年代前半に「急成長する中国経済への投資チャンス」のテーマで法人向けセミナーを開催しようとしたところ、客がなかなか集まらなかったそうです。後知恵では、中国の成長は自明なのですが、リアルタイムでトレンドの大転換をキャッチできる人はあまり多くないということです。

読みながらそのことを思い出したのが、下の記事です。

前回までとは違う形で物価が上がってきている要因を探ると、色々なところに不足がある。バブル崩壊後、設備・雇用・債務の3つの過剰が日本企業を苦しめましたが、これが逆方向に振れて物価にも表れてきています。

――「3つの過剰」で残る1つの債務の状況はどうですか。

 

寺坂:企業の手元流動性は史上最高の水準にまで積み上がっています。企業が設備投資を手控えていることの裏返しでもあります。レバレッジをきかせて投資をするよりは手元に積んでおきたいという意識がまだあるようです。雇用や設備が動き出せば手元流動性も減ってくる。3つは一体で動くのではないかと見ています。

「3つの過剰」という質問に、今更と強く感じてしまいます。

下の二つは、これまで何度も掲載したグラフです。

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企業の「過剰債務」が騒がれたのは1990年代半ばからですが、1998年度以降、非金融法人企業部門はフローの資金余剰を続け、「過剰債務」どころか「過少債務」に転じています。過剰債務は2000年代初頭には解消していたにも関わらず、未だに「供給過剰」感覚が抜けきらない人が多いようです。

「過少債務」は、企業が生産設備の更新・増強を控えてきたことを意味します(→ヴィンテージの上昇)。設備の老朽化が進んでいるわけです。

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雇用も「過剰」を大義名分にした、労働条件切り下げが限界に達しつつあります。

色々なところに目詰まりが起きています。建設業が典型例で、震災復興で予算を付けてもなかなか執行までたどり着かない。公共投資にも同じような現象が見られます。

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建設業就業者はピークから3割弱減少していますが、公共投資(実質)をピークから半減させたことの反映です。

生産能力強化の阻止(ラッダイト運動?)は国策でもありました。その最たる例が、1993年からの「円の過大評価維持・空洞化促進政策」が実を結んだ製造業です。製造業就業者は、クリントン米大統領による円高誘導が始まった1993年から減少を続けています。

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債務削減・投資抑制を反映して、生産能力は減退傾向にあります。

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貿易赤字の定着は、「強すぎる日本の製造業を弱める」という、1980年代以降の日本政府の政策が、成功し過ぎたことを意味します。

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企業が投資を抑制してきた理由の一つは、低賃金の非正規労働力の確保が容易だったことと考えられます。しかし、若者の人口は既に急減に転じており、回復する見込みはありません。

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1980年代までの成長トレンドを生きてきた人たち(主に50代以上の男)には、「日本経済の底力は強い」という“Japan as Number 1”的な観念が刷り込まれているように思えます。人間にたとえると、「力が有り余っている→多少力を削いだ方がバランスが取れる」というイメージで、「有り余った供給力を削減する→需給がバランスしてデフレが終わる」という政策が長きに渡って続けられてきたということです。「プロクルーステースのベッド」のようなものとも言えます。 

しかし、「まだまだ若い」と思っていた人が、子供の運動会で怪我をして始めて自分の老化に気付くように、日本の「老化」は着実に進んでいました。いつまでも若くないにも関わらず、力(供給力)を削ぐ政策を続けていれば、いずれは限界に達することは明らかです。

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高齢化が進むことが分かりきっているにも関わらず、円の過大評価と空洞化を放置し、若者の雇用環境を悪化させてきたわけですが、1998年以降の「とことん削れ(ケチれ)」のトレンドも、そろそろ転換点を迎えつつあるようです。

「いつまでも若い」と勘違いすることによる失敗は、下記事のモデル系美女と同じパターンです。