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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

麻生大臣の正論と誤解

13日の麻生財務大臣の記者会見概要が公表されたので、【麻生財務大臣の「ふざけた話」発言】に追加します。

株屋批判については多くの人が同意するでしょう。

少なくとも、これまで信託会社がお金を預かって、その信託で元本保証みたいなことを言っておいて、高利回りの話をして、売上げを上げるたびに、手数料が入る。だから、売上げを上げるためには、自分の手数料を増やすためには、何回も何回も切り換えた方が、手数料が儲かる、大体そういう仕組みでしょう。<略>株屋が信用されなかった、信託会社が信用されなかったということでしょう。たぶん、今まで信用されないような行動だったのです。だから信用されない、しなかったということだと思いますよ。

問題は以下の部分です。

この寝ているお金、タンス預金を含めて寝ているお金が、成長産業にお金を回す可能性のある金融機関を経由して、いわゆる信託を経由して振り向けられる。成長産業にお金が振り向けられる、経済成長に資するようなものに振り向けられるというところが大事なのだと、私はそう思います。

では個人金融資産は幾らとか、会社の金融を含めて幾らとか、そういったものを足せば約3,000兆円ぐらいになるでしょう、海外のファンドとか投資家から見て、そう思っていますよ。そのお金がじっとしているところが問題です。金利が幾らだ、10年ものの国債で0.5%とか0.6%とかというわけでしょう。昔は回ったわけですから。仮に、そのお金が、0.6%の金利が1%増えただけで3,000兆円で30兆円増えることになります。そのお金に回るようなことを考えたら大きいなと。

麻生大臣は

  • 証券会社や信託会社が個人顧客を食い物にしてきた→個人が株式投資を嫌うようになった→リスクマネー減少→潜在的な成長産業に資金が回らない→経済成長率低下
  • 証券会社や信託会社が個人の信用を得る→低リスク・低リターンの現預金から高リスク・高リターンの投資信託にマネーシフト→成長産業が経済を牽引

と考えているようですが、これは因果関係を誤って捉えています。

そもそも、銀行は自ら預金を創造して貸し出すので、有望な貸出先(成長産業)があれば、資金は供給されているはずです*1 。実際、30年以上前の家計金融資産に占める現預金の割合は現状を上回っていましたが、経済成長の妨げにはなっていませんでした。家計金融資産の50%超が現預金であることは、成長産業が資金不足になることを意味しません。家計金融資産に占める株式の割合が高い国ほど経済成長率が高いわけでもありません。

10年国債金利が0.6%の低水準にあるのは、企業部門資金需要が乏しい*2ため、銀行や機関投資家が消去法で国債購入を積極化した結果です。企業が有望な投資先を見つければ、銀行や機関投資家は喜んで資金を振り向けるでしょう。「お金が(現預金として)じっとした」ままでも、家計は預金金利上昇の恩恵を受けられます。家計は自ら積極運用しなくても、銀行や機関投資家等のプロに任せればよいのです。

「貯蓄から投資へ」を正当化する「家計の(直接・間接の)株式保有増加が経済成長率を高める」というロジックに説得力を感じてしまう人は結構多いようです。これもNISAを勧める株屋のセールストークだと思えるのですが。

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*1:バブルの背景には、貸出先として有望な産業が見当たらなくなったため、銀行が不動産向け貸出に傾斜したことがあります。

*2:企業部門は1998年度以降、資金不足ではなく資金余剰。