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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「都議会やじ問題」が覆い隠したこと

東京都議会における塩村議員(35)に対する「早く結婚したほうがいいんじゃないか」やじ問題は、鈴木議員(51)が陳謝する展開となりましたが、気になる点について指摘しておきます。*1

Change.orgでは、「東京都議会における差別発言を許さない市民一同」が発言者の厳正処分を求める署名活動を行っていますが、その声明に以下の一節があります。

出生率の低下が日本全体の問題として叫ばれており、その対処が模索されています。

この問題の一因は女性をとりまく状況にあります。

いま日本の社会では、女性は、妊娠・出産をたとえ強く望んでいたとしても実際に行うためには、その女性本人をとりまく社会環境に由来するさまざまな障害を乗り越えなくてはならず、それゆえに非常に重い負担を強いられています。

まして、東京都はもっとも子育てしにくい場所だといわれています。

出生率低下は、女が重い負担を強いられていることの表れ」*2というよくある主張ですが、これが事実ではないことは、【少子化社会対策白書と「新しい社会のためのシステム」】などで指摘しています。出生率低下の主因は晩婚化*3・非婚化であり、その主因は雇用機会均等化による女の経済力の向上(と男の経済力の相対的低下)です。女の要求水準の上昇(→高望み:理想は誠実な島耕作)と、「結婚しない自由」を行使できるようになったことの結果です。*4 

2012年の合計出生率は、全国1.41に対して東京1.09と、東京の低さが際立っていますが、これは「子育てしにくい場所」だからではなく、男並みに働く女が多いためです。東京の出生率が、香港など都市化が進んだ女の就業率が高いアジアの国・地域とほぼ同水準であることはこれで説明できます。

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このような批判に疑問を感じるのは、今回は「女の問題」として扱う一方、女性手帳の際には「女だけの問題ではない」という批判が多かったことです(ダブルスタンダード?)。

経済的要因で結婚できなくなっているのは女ではなく男であることは、少子化社会対策白書や関連調査に示されています。未婚率が高いのも女ではなく男です。

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未婚率を低下させるには、男の経済力向上が効果的なのですが、そのような主張は聞かれません。日本の「後進性」を批判する論者が模範例にする北欧のノルウェーでは、「負け組」の男が増えています。

修正を迫られる10年遅れの日本経済観】では、現状の変化に認識と対応が遅れることの危険性を指摘しましたが*5少子化問題に関しても同じです。もはや必ずしも「男は強者、女は弱者」という構図ではなくなっているにもかかわらず、「女の負荷を減らし(支援し)、男の負荷(と義務)を増やす」という慣性が続いていることが、「無敵の人」予備軍を増やす一因になっているように思えるのですが。

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*1:3年前に「そろそろ落ち着きたいです」と言っていた人物に対して「早く結婚したほうがいいんじゃないか」と突っ込みを入れることがこれほど問題視・糾弾されるようでは、言論が委縮しかねません。そもそも、「早く結婚したほうがいいんじゃないか」だけなら、塩村議員が男でもあり得るやじなので、性差別・女性蔑視・“セクシュアル”・ハラスメントではなく単なるハラスメント、と言うより「大きなお世話」のはずですが。

*2:塩村議員は東京都の第一子出産年齢が31.8歳(2012年、全国は30.3歳)と高いことや妊娠・出産・育児支援について質問しており、出生率低下については直接言及していません。

*3:2012年の妻の平均初婚年齢は、全国が29.2歳、東京が30.3歳。

*4:これは塩村議員にも当てはまると考えられます。Tweetを参照。。昔の方が生活が楽だったはずがありません。

*5:「下り坂が続く→ブレーキを踏む」行動が長く続くと、上り坂になってもアクセルではなくブレーキを漫然と踏んでしまい、停止させてしまうようなものです。