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現預金は「眠る資金」という根強い誤解

麻生財務大臣の「ふざけた話」発言】と【麻生大臣の正論と誤解】で取り上げた内容について、「日本経済に詳しい税理士」が奇妙な説明をしています。

「どこの国に880兆円(も)のカネを現預金で持っている国があるのか。ふざけた話じゃないか――」。6月中旬の記者会見で、麻生太郎財務大臣がこう発言した。莫大な資金が成長産業などへの投資に回らず「眠ったまま」になっている状況を憂えたのだ。

このように主張している人は、どうやら「銀行は個人が預け入れたお金を金庫に貯め込んで眠らせている」とイメージしているようです。

もちろん、実際は「銀行が貸出や有価証券購入によって創造した預金が、家計に移転している」というものです。家計が預金を保有していることは、銀行が企業に貸し出したり国債を購入したことの結果です。銀行から供給された預金は、企業活動や財政支出に使われているので、「眠ったまま」ではありません。なお、過去20年の家計金融資産の増加は、政府の負債(主に国債)の増加に対応しています。

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資金が成長産業などへの投資に回ら」ないという主張も多く聞かれますが、これも認識が逆さまで、「成長の見込みが立たないから資金が向かわない」、つまり銀行や機関投資家は「成長産業」が本当に成長するとは判断していないということです。そもそも、企業部門は全体として1998年度から資金余剰が続けています。

現預金が投資などの経済活動に回っていない理由としては、国民の投資に対する基本的な知識と情報収集力が足りないこと、将来の所得に対する不安からリスク回避思考が強まっていることなどが考えられます。

金融リテラシーの三問】で紹介していますが、金融リテラシーが高いスイスやドイツの家計が株式保有に傾斜しているわけではありません。金融立国のスイスは、現預金の構成比は日本よりも低いものの、代わりに保険準備金の比率が高く、株式の比率はあまり変わりません。

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日本では1990年代から「将来の所得に対する不安」が強まったので、リスク資産を増やさないことが合理的です。現状は、金融リテラシーを適切に発揮した結果と言えます。

しかし、株価が好調だった頃は違います。平成元年(1989年)12月には、日経平均株価が史上最高値の3万8957円に達しました。その前年の昭和63年には金融資産に対する投資の割合は27.5%もありました。このことから、日本でも儲かるならば、投資に回す人は少なくないということでしょう。

グラフから見当が付きますが、バブル期に「金融資産に対する投資の割合」が高かったのは、株価高騰を反映して時価が膨れ上がっていたためです。個人等の投資部門別株式保有比率は、バブルが始まる1980年中頃から、約20%で一定です。

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では、どうすれば株価は上がるのだろうか。

現在の株価(日経平均15000円前後)は、実体経済と比較するとほぼ適正水準の範囲内にあります。株価は長期的には実体経済を反映するので、株価を上げるためには名目GDPを成長させるのが筋です。株価上昇率が名目成長率を上回り続ければ、それはバブルです。

日本の企業が国際的な競争力を持てるよう、法人税を下げ、規制を緩和して自由な競争を促進し、移民の受け入れなどにより日本の人口を増やす等、各種の政策を進めていって日本を経済的に魅力のある国にする必要があると思います。

法人税下げや規制緩和→国際的な競争力」の因果関係も不明ですが、それよりも、日本社会を確実に破壊する「移民の受け入れ」には呆れてしまいます(【スイスの移民制限国民投票可決は経済至上主義への反発】)。株価が上がるのなら、他がどうなろうと知ったことではない、という株価至上主義が蔓延しつつあるです。

「失われた20年」に続き、人口減少の脅威が迫ってきたためか、長期的・総合的に物事を考えられない人が増えているように思えます。