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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

日本経済へのトリプルパンチ~燃料高・大震災・アップル

輸出伸び悩みに関するNY連銀エコノミストの分析】と【増えない純輸出と企業の「要塞化」】の続きです。

日本経済への強い逆風となっているのが、円安にもかかわらず減少する純輸出です。その主な要因を抽出してみます。 

一つ目は、エネルギー価格の上昇です。原油や天然ガスなど鉱物性燃料の国際市況の高騰は、輸入額増加に直結します。燃料価格上昇前の2003年と比べると、約18兆円(GDP比4%弱)貿易収支を悪化させています。毎年の「年貢」が引き上げられたようなものなので、日本人の所得水準がその分の低下を余儀なくされます。

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2003~07年の円安期に、鉱物性燃料を除くと貿易黒字は10兆円以上増加しましたが、鉱物性燃料価格上昇によって相殺されてしまいました。

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そのため、経常収支黒字の増加は、所得収支黒字の増加の寄与分だけにとどまりました。鉱物性燃料価格が高騰していなければ、経常収支黒字はドイツ並みのGDP8%程度にまで増加し、景気をさらに刺激していたはずです。

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二つ目は、東日本大震災です。急激な円高や海外の景気後退がなかったにもかかわらず、輸出数量は大震災から約2年間減り続け、安倍政権誕生後の大幅円安でようやく下げ止まりました。大震災が発生していなければ、輸出数量は現状より1割以上多くても不思議ではありません。

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大震災の余波である海外シフト(日本脱出)の流れは収まっていませんが、これも国内経済にはマイナスです。

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三つ目は、日本経済の柱だった電機産業を凋落させたアップルに代表される海外企業です。

1980年代の日本の国際競争力の強さを象徴していたのが、自動車と電機産業です(なので、日米貿易摩擦で叩かれました)。しかし、輸出競争力を示す貿易特化係数からは、1990年代半ばから、両産業の明暗が分かれたことが読み取れます。

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1990年代は電気機器の貿易黒字が自動車を上回っていましたが、2001年以降は逆転しています。大幅な円安となった史上最長の景気拡大期に、自動車の貿易黒字は大きく増加しましたが、電気機器は横ばいのままでした。電機産業の貿易黒字は長らく7兆円前後を維持してきましたが、リーマンショック後に急減に転じ、現在では6兆円減の1兆円まで縮小しています。

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貿易特化係数と貿易収支の推移は、電機産業の国際競争力が大きく低下したことを示していますが、その象徴が携帯電話を含む通信機器の貿易収支です。史上最長の景気拡大期にも貿易収支は悪化を続け、2009年からは一気に赤字を拡大させています。2008年7月にはアップルのiPhoneが日本で発売されていますが、そのタイミングと重なります。

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燃料価格高騰と大震災はどうしようもないことですが、アップルなどに蹂躙される事態を招いた原因は、日本企業の経営(者)のまずさにもあると言わざるを得ないでしょう*1。電機産業の「マイナス6兆円」は、日本経済にとっては大きなオウンゴールの痛手です。

これらのトリプルパンチにどう対処していくかが、今後の日本経済のポイントになりそうです。

グーグル秘録

グーグル秘録

ストリンガーがCEOになるはるか以前、1979年に〈ウォークマンを世に送り出したソニーだが、2001年にはアップルのアイポッド〉の攻勢を受け始めた。2003年には〈アイチューンズ〉によって、シングル曲がわずか99セントで簡単にダウンロードできるようになり、ソニーのようなレコード会社のアルバム売り上げに打撃を与えるようになっていた。

その頃、ウォークマンはともかくも携帯音楽プレーヤーとして支配的な地位を占めていた。私は当時CEOだった出井伸之に尋ねたことがある。

アイポッドに脅威を感じるか?」

出井はまるでジャケットについた糸くずでも払うかのように否定した。

――ソニーやデルはものづくりを知っている。アップルは知らない。1~2年のうちに、アップルは音楽産業から手を引くはずだ、と。[p.348]

非連続の時代

非連続の時代

「私はソニーをやめる直前まで、アップルに対抗するためのビジネスを構築しようと必死になっていました。ところが、ある役員から『そんなことはやめてアップルに頭を下げてこい』と言われたんです。そのとき思わず、『あなたにはプライドはないのか』と聞き返しました。戻ってきた言葉は『プライドで会社が儲かるのか』。当時からすでにアップルの軍門に下るシナリオが進行していたということです」

アップル帝国の正体

アップル帝国の正体

 

参考記事

電子立国は、なぜ凋落したか

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NHK 電子立国日本の自叙伝〈上〉

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*1:もちろん、円高のために「貧すれば鈍する」になっていたことは考慮されるべきですが。