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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「異色の男性ジェンダー論研究者」の奇妙な男批判

人口・少子化

下の二つの記事で、妻が朝食を作る味の素のCMに「性差別」と激怒する論者のダブルスタンダードを指摘しました。

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

すると、これに応えるかのような記事が東洋経済オンラインに掲載されました。

toyokeizai.net

この記事にも無理があったため、それを下の記事で指摘しました。

totb.hatenablog.com

するとまたもや、夫(男)を批判する記事が掲載されました。*1

toyokeizai.net

現実に男性が行う家事時間は、共働き世帯の男性が平均1日39分なのに対して、女性が4時間53分(『社会生活基本調査』2011年)。つまり男性側は「専業主婦は養えないから働いてほしいけど、自分は家事はできないから女性がちゃんとこなしてほしい」と言っていることになり、女性側は「専業主婦になんてなれないのだから、男性もちゃんと家事育児を分担し、私の仕事のことも理解してほしい」と主張しているのです。

男性側は女性に二重負担を要求し、女性側は自分も働くのだから男性に家事への参加を求めている。これはどう考えても、男性側の発想のほうが「身勝手」だと言わざるをえません。

これだけを読むと「その通り」と思ってしまうかもしれませんが、これはデータの一部をつまみ食いしたミスリーディングなものです。

総務省『社会生活基本調査』では、人間の活動を三つに分類しています。

  • 1次活動:睡眠,食事など生理的に必要な活動
  • 2次活動:仕事,家事など社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動
  • 3次活動:1次活動,2次活動以外で各人が自由に使える時間における活動

「家事時間は、共働き世帯の男性が平均1日39分なのに対して、女性が4時間53分」からは、「妻が家事をする一方で、夫は寝たり遊んだりしている」かのような印象を受けますが、仕事時間は夫が8時間30分、妻が4時間34分なので、1次・2次・3次の時間配分は夫婦でほとんど差がありません。

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夫婦のみの共働き世帯について、土日を含む週7日間における1日当たり平均生活時間(週全体)をみると、仕事時間(通勤を含む。以下同じ)は夫が7時間54分、妻が5時間18分と、夫の方が2時間36分長くなっています。一方、家事時間(買い物を含む。以下同じ)は夫がわずか25分であるのに対して、妻が3時間3分と、妻の方が2時間38分長くなっています。
しかし、仕事及び家事に費やす時間を合計してみると、夫が8時間19分、妻が8時間21分となり、夫も妻もほぼ同じ長さになっています。

北欧諸国と同じく、仕事等の時間は夫>妻、家事関連の時間は妻>夫の分業をしているだけです。夫は妻に二重負担を要求して、自分は寝たり遊んだりしているわけではありません。これを夫の「身勝手」と非難することは筋違いです。

産業がサービス化→女が得意な仕事が増える→「夫が稼得労働に特化/妻が家事・育児に特化」の効率が昔よりも低下→夫婦の分担割合を見直す必要があるのでは、という主張であれば建設的ですが、事実に基づかない一方的な男批判は不毛です。

「男=悪」のバイアスはさらに続きます。

「家のことはキチンとやったうえで働いてほしい」なんていう男性は、自分自身がそんなことをできると思っているのでしょうか? 高学歴の女性が相手探しに苦労するのは、まさにこうした性役割分業規範から抜け出せない男性が多すぎるからなのでしょう。

以前の記事でも「男の意識に問題がある」かのように書いています。

toyokeizai.net

東大卒の女性の配偶者の実に約7割が東大卒です。[略]

このケースでは、東大女子の側には「自分と同等以上」という意識が薄いので、男性の意識のほうが効いているということになり、「男性の学歴下降婚」(男性は自分と同等以下の学歴の人と結婚したがる)と解釈できることになります。

しかし、下の引用のように「女は自分と同等以上の学歴の人と結婚したがる」と解釈するのが普通です。なぜ“東大女子の側には「自分と同等以上」という意識が薄い”と解釈するのか理解に苦しみます。「諸悪の根源は男」とひたすら男を貶める執念に憑りつかれているようです。

gendai.ismedia.jp

高学歴女子の食指が動くのは、高学歴の男性のみ。これを裏付けるデータがある。恋愛学者で早稲田大学国際教養学部教授・森川友義氏によれば、東大女子に、交際相手に関するアンケート調査を行った結果、70%が、交際相手は東大男子だったという。つまり、多くの東大女子は東大男子としかつき合えない現実がある。

高学歴女子が狙うのは、『3K』、すなわち、高身長、高学歴、高収入が揃ったモテ男ですが、彼らは、残念ながら高学歴女子を相手にしません。彼らが求めるのは、高学歴女子にはない可愛らしさや、男を支える家事炊飯能力ですからね」

「某中堅私大を出た夫がバカすぎて耐えられず離婚しました。たとえば、夫が『シェールガス』という言葉を知らなかった時には、本気で失望しました。こんな世間知らずな人といたら、私までバカになってしまうと身の危険さえ感じました」(一橋大法学部卒・33歳)

gendai.ismedia.jp

白河: これは私がずっと聞きたかったことなんですが、男性は自分より年収が高い女性と恋愛ができるのか、恋ができるのか・・・。

女性は、日本だとどうしても経済力が一番にきちゃうんですけど、年収でもなんでも自分よりちょっと勝っている人と結婚したいという上方婚志向が抜けなくて、すごく年収が高い女の人でも、自分よりもっと優れた能力のある人と結婚したいと思っているんですね。逆に、男の人って見えやすいものが好きじゃないですか。その辺はどうなのかと思いまして・・・。

博士: 結論から言いますと、男性は自分より年収が高い女性と恋愛も結婚もできますし、女性も、自分より年収の低い男性と恋愛も結婚もできます。

ただ、基本的には、女性は自分より劣った男を好きにはなれません。

高学歴の女性が、学歴の高くない男性を結婚相手として選ばないのは、そもそもそのような男性に魅力を感じないからである。「話が合わない」「物足りない」という言い方で、恋愛や結婚相手の対象から外してしまう。たまたま、妻が夫より高学歴という組み合わせのカップルがいても、その男性には、学歴に代えられない仕事上の能力があるというケースがほとんどである。[p.61]

totb.hatenablog.com

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「父親が子供の着替えを手伝う」を「夫が妻を手伝う→固定的な性役割分業→性差別」と誤読して味の素商品の不買運動を展開する異色の男性ジェンダー論研究者(東京大学教授)瀬地山角の目には、日本社会のあらゆることが「男が悪い」ように見えているようです。

最後には、結婚相手を探す男に「経済力よりも家事能力をアピールせよ」とアドバイスしています。

女性が「重視」するのは、「経済力」以上に「家事の能力」や「仕事への理解」。だとすれば男性は、性役割にとらわれない行動をとるほうが有利ということになります。 

「僕はあなたの分まで稼ぐ能力もなければ、意思もありません。その代わり、家事育児は必ず半分以上、分担します。自分のアウトプットを最大化するのではなく、2人のアウトプットを最大にすればよいので、自分の仕事をセーブしてでも、あなたのキャリア形成を応援する意思はあります」と伝えていました。

しかし、山田の前掲書にはその真逆のことが書かれています。*2

放送大学の取材で、若い女性に「仕事ができて家事ができない男性と、家事ができて仕事ができない男性とどっちがよいか」 という質問をしたところ、九割以上の女性は、仕事の方と答えた。 

結婚相談所の坂本洋子氏によると、なかなか結婚できない男性ほど、「結婚すれば家事もやります」とアピールする割合が多いそうである。そして、家事をやる男性だからといって、結婚しようとする女性もまずいないそうである。[p.35] 

もちろん、ケースバイケースなので絶対的な「正解」はありませんが、一般的には「経済力がなければ家事能力をアピールしてもほとんど無駄」と考えておくのがよさそうです。瀬地山の経験がその実例です。

上記のデータから分析すると、それでもまったくモテなかったのは、「人柄」と「容姿」に問題がありすぎたからだということになります……。

人柄と容姿以前に、そもそも分析が誤っていたということでしょう。その誤った分析を大手媒体から発信するのも、男たちを生涯未婚の「負け組」へと誘導する陰謀の一環なのでしょうか。

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*1:徐々にトーンダウンしているような気がしますが。

*2:同書の出版が1996年であることは考慮する必要がありますが。