読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

輸出停滞は「中国に競り負けた」ためか

アベノミクス

円安にもかかわらず輸出が増えない理由を、「中国に競り負けている」ためとする記事が掲載されました。


なぜアベノミクスによって輸出が増えないのか 中国に競り負ける日本:JBpress(日本ビジネスプレス)

アメリカと韓国も含めたグラフを下に示します(輸入も)。*1

f:id:prof_nemuro:20140908181450g:plain

f:id:prof_nemuro:20140908195832g:plain

中国の輸出シェア上昇と日本の輸出シェア低下が対照的なのでゼロサム競争に競り負けているように見えますが、韓国は同時期にシェアを上昇させています。

また、2003~08年の円安期には日本の輸出シェアは低下しましたが、円安に応じて輸出額は大幅に増えていました。

f:id:prof_nemuro:20140908195913g:plain

f:id:prof_nemuro:20140909075209g:plain

日本の輸出シェア低下は過去20年間続いていますが、円安が輸出数量増加につながらないのは、2012年末からのアベノミクスに特有の現象です。つまり、「中国に競り負け」ていることは、輸出が増えない主因ではないということです。

では何が主因かですが、輸出企業の行動の変化ではないかと推測されます。

製造業は2003~08年の円安期(史上最長の景気拡大)に輸出主導で経常利益をバブル期を大幅に上回る水準まで増やしました。それに応じて、設備投資もバブル崩壊後の最高水準まで増やしました。

f:id:prof_nemuro:20140908204720g:plain

しかし、リーマンショック後の海外需要急減と急激な円高により、経常利益はプラザ合意やバブル崩壊をはるかに上回る急減となりました(天国から地獄)。輸出産業はこの苦い経験から、「円安に便乗して輸出と設備投資を増やすことは危険」と学習したと考えられます。2012年末からの円安に「将来の損失を回避するために、目先の利益を放棄する*2」リスク回避的行動で応じているとすれば、輸出と設備投資の停滞が説明できます。輸出を増やないというより増やないということでしょう。*3

下のロイターのコラムも類似した分析をしています。


コラム:アベノミクスに立ちはだかる2つの「障壁」 | コラム | Reuters 

企業は国内での投資を拡大して攻めに転じるよりも、円安を当たり前のこととは考えず、現在の相場環境が続く間は高い利益率を享受しようとしている。

円安による利益は規模拡大のために使うのではなく、ため込む方向にある。

実質金利低下と実質円安にもかかわらず、企業が設備投資や輸出を積極化させないのであれば、残った景気刺激策は財政しかありませんが、逆噴射的に4月には消費税率が引き上げられてしまいました。1年後には10%が待っています。「本格的内因にもとづく景気回復」のシナリオを描くことが困難な情勢です。「日銀が当座預金残高を激増させれば景気回復する」のであれば杞憂で済むのですが。


アングル:V字回復暗雲かかる7─9月GDP、政府に増税判断の難問 | Reuters

 

関連記事


「日本に期待しなくなった」輸出企業が意味するもの - Think outside the box


長期金利低下と勢いを欠く設備投資 - Think outside the box


NHK『メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオⅡ』が見落とした1993年のミッドウェイ - Think outside the box

*1:日本経済の転換点が1985年の1993年の円高だったことがよく分かります。

*2:価格効果は享受するが、数量効果は放棄するということ。

*3:上げ相場に参加して当初は儲けたものの、後に暴落で大損した人が、次の上げ相場には慎重になって投資を控えるようなもの。