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「日本の高学歴女性、3割就労せず」を読み解く

高学歴の女の就労を増やすために、就学前教育や保育を拡大するべき、という記事が掲載されています。


日本の高学歴女性、3割就労せず OECD内最低レベル:朝日新聞デジタル

OECDのアンドレア・シュライヒャー教育局長は、能力の高い女性が就労するためには、3歳未満の保育を拡大することが必要だと指摘する。

朝日の記事の原典は下の記事中の「日本に関する資料」です。


ニュースルーム - OECD

より低年齢の幼児を含めるよう就学前教育を拡大することは、幼児が教育面において恩恵を受けるだけでなく、より多くの女性が労働力として参画することに寄与するであろう。

出生率のドイツと高出生率のフランスや北欧との比較からは、就学前教育や保育の利用の容易さが、女が子育てしながら働き続けることを可能にしていることが示されています。労働力減少を補うために女の就労率を高めることが求められる日本にとっては、参考になる指摘です。

しかし、朝日の記事中の専門家の分析だけで就労率の低さが説明できるかといえば疑問です。

女性のキャリアに詳しい日本女子大大沢真知子教授は、今回の調査結果について、「高学歴女性という資源が生かされていないのは、子育て後に再就職しようとしても単純なパートなどしか選べず、能力に見合う仕事がないことが原因」と分析している。*1

女には「自分以上の男と結婚したがる」という一般的傾向があるので、高学歴の女の夫も高学歴→夫が高所得→妻が働かなくても生活できる→妻の就労率低下、というメカニズムでも説明できるからです(ダグラス・有沢の法則)。

近年では「ダグラス・有沢の法則」が弱まっているとの説もありますが、内閣府統計委員会に総務省統計局が提出した資料*2によると、依然として残っているようです。

  • 妻の就業率は、夫の収入が200~299万円をピークに1000~1499万円まで、夫の収入が多くなるにしたがって低下する(低所得階級には高齢者が多く、就業率も低い)。 
  • 妻の年齢を25~54歳に限ってみると、夫の収入が多くなるほど妻の就業率は低下する。
  • 妻又は夫の年齢を限定すると、長期的にみると弱まってきているものの、夫の収入が多くなるほど妻の有業率は低下する傾向がみられる。

仕事しなくても生活できるだけの金蔓をつかんでいれば、わざわざ働かないのは女も男も同じでしょう(有閑マダム/ヒモ)。

北欧諸国で女の就労率が高い背景には、働かないことが社会通念に反することがあります(プー子扱い)。日本では、働かないことでネガティブに評価されるのは男だけですが、北欧ではこれに関して男女平等なのです*3。しかし日本では、「夫が働き、妻は専業主婦」は社会に認知されており、高学歴女にも希望者が多くいます。なので、高学歴女の「能力に見合う仕事」が増えても、就労率が北欧並みになるとは言えません。

そもそも、想定されているであろう文系ホワイトカラー職」は企業の“リストラ”のターゲットであり、高学歴女の3割もの労働供給を吸収できるとは考えにくいでしょう。


実例集 友だちできない、夫がバカに見える、満足できない 勉強できすぎる女子たちの孤独と不幸 | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]

個性が強い彼女たちだが、意外と家庭志向の人も少なくないという。慶應大文学部卒の少子化ジャーナリスト・白河桃子氏が言う。

「たまたま頭がよくて、偏差値の高い大学に行って、仕事もできてしまうだけで、実は専業主婦願望の人も多いんです。

著名フェミニスト学者も以下のように語っています(ブラック企業経営者とほとんど同じ思考です)。


心理学者・小倉千加子氏「専業主婦こそ“普通”の生き方」 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版

フルタイムもパートも同じ賃金になって、結婚後も全員が「中時間労働」することを女性が望んでいるとは思わない。妻の人生には充電のために中休止が必要であるが、夫には家族のため、世の中のために必死で働いてほしい。夕方から家にいる人を尊敬できるだろうか。

なんでもかんでも「日本は遅れた男尊女卑社会」に結論付ける報道には疑問を感じざるを得ません。


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「お手本の国」のウソ (新潮新書)

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*1:[引用者注]「能力に見合う仕事」の需要がない→就労しない、という可能性もありますが。

*2:平成20年1月21日 第5回統計委員会・第7回基本計画部会 合同会議配布資料

*3:日本でも、家族経営の零細自営業では、妻が働くことが当然視されることと同じ。