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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

アベノミクスと株主価値最大化の思想

アベノミクス

安倍総理大臣がウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿しています(本人が書いたわけではないでしょうが)。


アベノミクス、第2ステージに突入=安倍晋三首相寄稿 - WSJ

消費税率引き上げが「将来の消費拡大につながるはずだ」ということですが、多くの人には希望的観測と感じられるのではないでしょうか。

一方、4月の5%から8%への消費税率引き上げによる収入は、もっぱら社会保障に充てられる。これにより将来への懸念が払拭(ふっしょく)され、将来の消費拡大につながるはずだ。

気になる点を一つ挙げるとすると、以下の部分です。

経済成長の原動力である企業が利益を増やせるよう、法人税の実効税率を今年度2.4%引き下げ、来年度さらに引き下げる予定だ。最終的には数年で20%台にまで持って行くことを目指す。また、コーポレートガバナンス企業統治)も強化している。例えば、東証1部上場企業の74%が社外取締役を任命しており、その割合は過去1年で12%増えた。

これは明らかに、アメリカ発の「株主価値最大化」の発想です。1970年代に日本企業の攻勢などで行き詰ったアメリカ企業に、一部の経済学者が処方箋として提示したものですが、企業は利益拡大→株価上昇だけを目標とするべきという思想です。この思想が、過少投資や産業空洞化、格差拡大など様々な問題を引き起こしていることは、近年、米英でも徐々に議論されるようになっています。

アメリカでも反省の気運が出てきた「狂信的発想」を日本再興の理論的支柱にすることには懸念を抱かざるを得ません。


株主価値最大化と「狂信的な発想」 - Think outside the box

企業はバブル期を超える経常利益を稼いでいますが、これまでの法人税減税により、法人税額は大きく下回っています。

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他方、増益でも給与を増やさない傾向が定着しています。

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アメリカ企業と同じく、従業員を「苛烈に搾取する対象」と見る傾向が強まっているように思えます(例:ブラック企業の蔓延)。利益増という目的のためにはあらゆる手段が正当化される、という思想は日本にも深く浸透していたようです。これで「将来の消費拡大につながる」でしょうか。

加えて、金利低下・大幅円安が設備投資の盛り上がりにつながっていないことにも、アメリカ的思想が影響している可能性があります。


日本企業のマングース化 - Think outside the box

1980年代以降のアメリカでは、株価が大幅に上昇する一方で、経済格差が拡大し、中間層の実質所得はほとんど上昇しませんでした。アベノミクスもそのコースを辿るのでしょうか。

ケインズの"Practical men, who believe themselves to be quite exempt from any intellectual influences, are usually the slaves of some defunct economist."という言葉が実感されます。

 

参考記事


内閣官房参与・浜田宏一氏直撃インタビュー 消費税より法人減税を主戦場に (2/2ページ) - 政治・社会 - ZAKZAK

「政府がまずできることは、世界一高い法人税率を引き下げること。いまの35%から20%台前半まで下げることが必要だ。個人的な見解では、法人税率を十分に下げることで内外から投資を呼び込み、結果的に税収が増え、消費税率を上げなくても済むのではないか」と浜田氏は語る。

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