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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

第一の矢を無効化する第三の矢

アベノミクスの第一の矢では、円安・株高が国内生産活動を刺激することが期待されていましたが、現実は期待を下回っているようです。その主因と考えられるのが、製造業の海外シフトが根強いため、国内生産と輸出増に結びついていないことです。


中小企業を襲う超円安ショック:日経ビジネスオンライン

自動車メーカーに限らず多くの製造業大手は、輸出に有利な円安になっても「海外を強化する」方針を変えるつもりはない。製造業にとって最も避けるべきは、為替変動によって事業継続が困難になるリスクだ。その解決策は、製品の需要地で生産する「地産地消」を進めることにほかならないからだ。消費市場として成長が見込みにくい日本国内の生産能力を増強し、成長市場の海外に輸出するという経営判断は、事業の持続性を考えれば合理的でない。*1

トヨタ自動車の2007年8月~2008年7月と2013年8月~2014年7月の12か月間を比較すると、

  • 国内生産: -97万台
  • 輸出  :-107万台
  • 海外生産:+138万台

となっています。海外生産増加が輸出増加(→国内生産増加)を阻んでいます。

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製造業の根強い海外シフトの根底には、①長期に渡った円の過大評価、②円為替レートの変動の大きさ、がありましたが、それに加えて第三の要因も無視できなくなってきたようです。

米英では製造業の空洞化が進んでいますが、その一因には金融セクターの強大化と株主利益最大化の行動原理の定着があると言われています。


The Problem of Corporate Purpose | Brookings Institution

Anne also wants Apple to outsource as many jobs as possible to areas of the world where labor is cheap and taxes are low, even though cutting Apple’s employment rolls and tax payments in California may harm California’s public education system (and Betty’s job).*2

ところが、アベノミクスでは「株主利益最大化を求める投資家の圧力増大」が、第三の矢=成長戦略に含まれています。


「モノ言わぬ株主」が「責任ある機関投資家」へ 大手生保の圧力で日本企業が変わる! | 磯山友幸「経済ニュースの裏側」 | 現代ビジネス [講談社]

安倍内閣は、生保など機関投資家が「株主」「投資家」としての利益拡大に動くようになることで、経営者に圧力がかかり、企業の収益性が高まることを期待している。


円安、日本のカンフル剤にならず - WSJ

日本株に強気の投資家らは、円安がトヨタ自動車などの輸出関連企業の利益を押し上げると言うが、その楽観的見方の中心的な理由は別のところにあり、それは日本企業と政府は投資家に報いることに真剣になりつつあるという兆候が見られることだとみている。

ゴールドマン・サックスのチーフ日本株ストラテジスト、キャシー松井氏は「為替問題は別にして、多くの日本株のプレーヤーは企業統治の面で勇気づけられている」と、増配など株主還元策の充実に対する新たな圧力があることに言及した。安倍首相の経済政策は金融、財政面での刺激に加えて、このような構造改革が柱になっている。

東証等の「株式分布状況調査の調査結果」によると、2013年度の外国法人等の株式保有比率は30.8%で過去最高となっています。企業が「投資家に報いる」とは、日本の労働者よりも海外の投資家の方を向くようになるということです。

米英で空洞化や格差拡大を促進した思想で「日本再興」というのはブラックジョークのようですが、日本が20年遅れでアメリカの後を追うのであれば、グローバル企業の業績・株価と一般大衆の生活水準の乖離が甚だしくなるでしょう。日本はアメリカとは異なり、人口減少・高齢化の強烈な逆風が吹くことも忘れてはなりません。


株主価値最大化と「狂信的な発想」 - Think outside the box


輸出停滞は「中国に競り負けた」ためか - Think outside the box


日独財政の違いを生んだ為替レート変動 - Think outside the box

*1:強調は引用者。

*2:強調は引用者。