読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「男性の家事労働は(生涯年収)2億円」の妄想

人口・少子化

「男女に生まれつきの選好・適性の違いは無い」ことを公理とする異色のジェンダー論研究者(東京大学教授)・瀬地山角が、例によって変なことを書いています。

toyokeizai.net

「合格点」といっても、最終的には男女がほぼ半々やる、というのがあるべき姿なのは変わりません。女性は半分しかやらないと「家事をやらない」と言われ、男性は半分負担すれば「すばらしい!」と言われるのですから、ルール自体がおかしい、女性に不利なゲームであるのは間違いありません。男性は明らかに、水増しされて評価されています。その出発点におけるズレは決して忘れてほしくありません。

家事を漁や炭鉱労働のようなハードな仕事に置き換えてみます。

「合格点」といっても、最終的には男女がほぼ半々やる、というのがあるべき姿なのは変わりません。男性は半分しかやらないと「仕事をやらない」と言われ、女性は半分負担すれば「すばらしい!」と言われるのですから、ルール自体がおかしい、男性に不利なゲームであるのは間違いありません。女性は明らかに、水増しされて評価されています。その出発点におけるズレは決して忘れてほしくありません。

漁村で男が半分しか漁に出なければ「仕事をやらない」 と言われ、その妻が代わりに漁に出れば「すばらしい!」と言われるでしょうが、それをルール自体がおかしい、男に不利なゲームと言う人はほとんどいないでしょう。

f:id:prof_nemuro:20141002203930g:plain

外での仕事を夫が妻よりも多くこなすのであれば、妻が代わりに家事を多くこなすのは当たり前です。夫が仕事中心、妻が家事中心に分業しているのは、分業の利益によって世帯全体の生活水準を高めるためであり、古今東西に共通する現象です。

労働の性的分業は、カルチャー・ユニヴァーサル、つまり人間社会に普遍的な慣習の一つである。

総務省『社会生活基本調査』では、人間の活動を三つに分類しています。

  • 1次活動:睡眠,食事など生理的に必要な活動
  • 2次活動:仕事,家事など社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動
  • 3次活動:1次活動,2次活動以外で各人が自由に使える時間における活動

グラフから明らかなように、男は家事時間が少ないものの、仕事時間は多く、2次活動トータルでは男女(夫婦)に差はありません。男が楽をしている=有利とは言えません。

f:id:prof_nemuro:20140904173147g:plain

アメリカでも、仕事は男、家事は女が主担当ですが、2次活動時間はほぼ同じです。

f:id:prof_nemuro:20141002142230g:plain

男女平等先進国のノルウェーでも同じです。仕事と家事の分担割合が接近していますが、依然として男は仕事・女は家事に時間を割いています。

f:id:prof_nemuro:20141002142231g:plain

totb.hatenablog.com

仕事と家事をどのように分担するかは、ミクロでは夫婦の職種や所得、マクロでは産業構造等に影響されるので、「半々が正しい」と決められるものではありません。単なる"politically correct"に過ぎないということです。*1

公理が非現実的なので、結論も非現実的です(Garbage in, garbage out.)。

この連載の中で何度も強調してきましたが、妻が出産時に仕事を辞めなければ、辞めた場合と比べて生涯年収で1億~2億円の差が出ることがわかっています。夫婦でフルタイムで働くには、男性側の積極的な家事参加は不可欠です。そして、それは最終的に、男性が肩の荷を降ろすことにつながります。

そうは問屋が卸しません。ミクロでは「妻の家事時間が減る→夫の家事時間が増える→夫の仕事時間が減る→夫の収入が減る」、マクロでは「女の労働力が増える→男の賃金が下がる→夫の収入が減る」となります。家事を外注すれば、ほとんどの世帯では増収分が吹っ飛ぶでしょう。世帯では「1億~2億円」は絵に描いた餅です。

「男性の家事労働は2億円に相当」するのなら、「永久就職」に血眼になる男が続出するでしょうが、そんな就職口がどこにあるのでしょうか。世の中、そんなに甘くはありません。

f:id:prof_nemuro:20141002205619g:plain

そもそも、「男性が肩の荷を下ろす」ことは、女がその荷を背負うことなのですが、どれだけの女がそれを望んでいるのでしょうか。女のジェンダー論研究者は以下のように語っていますが。*2

dot.asahi.com

「普通に働いて普通に子どもを育てたい」と女性が言う時の「普通」とは、フルタイムで子どもを保育所学童保育に預けながら働くか、結婚しないか、結婚しても子どもを持たないという選択肢の中には存在しない。「専業主婦」こそ「普通」の生き方なのである。

フルタイムもパートも同じ賃金になって、結婚後も全員が「中時間労働」することを女性が望んでいるとは思わない。妻の人生には充電のために中休止が必要であるが、夫には家族のため、世の中のために必死で働いてほしい。夕方から家にいる人を尊敬できるだろうか。

社会学系には、「政治的に正しいことは、経済合理的・科学的にも正しい」と考える人が多いようです。困ったものです。*3

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

totb.hatenablog.com

*1:日本の男女分業が行き過ぎている→男女差を縮小したほうが効率的になる、という可能性はありますが、それは「家事も仕事も半々が適正」を意味しません。

*2:2013年のアメリカの労働災害死亡者約4400人の内訳は、男4100人、女300人でした(93:7)。男女の働き方を等しくするのであれば、「女の労災死亡者+1900人」が適当になってしまいますが。

*3:「男の負荷を高める&女の要求水準を高める→非婚化→子孫を残せず」によって“負け組”の遺伝子を淘汰しようとする、“勝ち組”の陰謀の可能性を疑ってしまいます。