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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

エマ・ワトソンとタイタニックとルシタニア

人口・少子化

エマ・ワトソン国連でのスピーチが国内外で話題になっていたので、少し考察してみます。*1


私たちは性の不平等を終わらせたいのです。そのためには、一人一人の参加が不可欠なのです | Emma Watson 


Emma Watson Gender equality is your issue too | UN Women – Headquarters

もし、男性が女性に認められるために男らしく積極的になる必要がなければ、女性も男性の言いなりにならなければとは感じないでしょう。もし男性が女性をコントロールする必要がなれければ、女性も男性にコントロールされる必要はありません。

If men don’t have to be aggressive in order to be accepted women won’t feel compelled to be submissive. If men don’t have to control, women won’t have to be controlled.

この主張の限界は、例によって生物学的要因を軽視していることです。人間も動物の一員なので、子孫を残すために異性を求める本能的欲求を否定できません。そして、いわゆる男らしさ・女らしさは、異性から求められるもの=性的魅力や、同性集団における地位と不可分です。

男性の魅力として語られるのは、「たくましさ、体力、指導力、知識の豊富さ、会話の巧みさ、人生経験の深さ」などである。これらの特徴は、社会的に成功する能力を示している。


白河桃子の恋愛サイエンスカフェ|人間にだけ、なぜ負け犬が生まれるのか|婚活・婚活サイトならyoubride(ユーブライド)

一番印象的だったのは、ベネズエラアチェという、狩猟採集と焼き畑農耕の人たちの話です。
彼らの中でモテる男子とはケンカに勝つ強い男子ではない。「大雨の日に薪を切ってしょって帰って来られるような強い男」「子どもを肩車して何キロも森の中を歩ける男」「みんなが困っている時に、火を炊いて冗談の一つも飛ばせるやつ」だということです。
婚活中の女子なら、誰もが「いいなあ」と思うはずです。

男に「男らしさ」を捨てることを求めるのは、レース中の選手に「途中棄権すれば楽になる」と言うようなものです(宦官?)。確かに楽にはなるかも知れませんが、その代償として、稼得と異性獲得の両面において敗者として生きていかなければなりません。それが嫌だから、なかなか「らしさ」を捨てられないのです。

SKY合格を必死に目指す韓国の受験生に対して、勝ち組が「無理しなくてもいいじゃないか」と言っているようなものとも言えます。もちろん、不合格→非正規雇用→結婚できない→…の人生を送ったとしても、「個人の自由」「自己責任」で終わりです。勝ち組に負け組の面倒を見る気はさらさらありません。救済を求めても足蹴にされるだけでしょう。

バックラッシュ!  なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?

バックラッシュ! なぜジェンダーフリーは叩かれたのか?

何でフェミニズムが、彼ら*2の不安のケアをしなければならないのですか? 女にケアを求めるのは筋ちがいでしょう。そういう人たちがフェミニズムの妨げになるかもしれないので、降りかかる火の粉は振り払い、じゃまなものは足蹴にしなくてはならないから、対策は必要だとは思いますよ。私は社会工学的で管理主義的な発想を持たないので、彼らをケアする、つまり慰撫したり統制したりしようとは思いません。自分のケアは自分でする、これがフェミニズムの自己解放の思想の基本のきです。*3

「男らしさ」を極端化すると、「非常時には自分の命を犠牲にしてでも女・子供を守る」になります。1970年のよど号ハイジャック事件の際には、途中で女・子供が解放されました。後には山村新治郎が身代わり人質となって「男・やましん」と称賛されました。

人質事件において、女・子供・老人・病人が先に解放され、元気な男が残るのは、日本でも欧米でもイスラム圏でも当然視されています(治安当局も犯人も一般人も)。しかし、これは「ジェンダーの固定概念に縛られている」ので、ワトソン的には正しくない是正されるべき考え方のはずです。犯人の立場では、肉体的に頑健な人から先に解放するのが合理的です(厄介払い)。結果的に残ったのが女だけだったのであれば、それを非難される筋合いはないはずです。*4

豪華客船タイタニック号の沈没時には、"Women and children first"の結果、女の生存率は男を大きく上回りました(一等の男<三等の女)。

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しかし、これは「ジェンダーの固定概念」に縛られて死んだ男が多数いることでもあります。ワトソン的には、"women first"も是正されるべきでしょう。

その理想が、タイタニックの3年後に魚雷攻撃で沈没したルシタニアです。ルシタニアでは、若い男たちが文化的な男らしさ=犠牲の精神に縛られなかったために、生物的な男らしさ=力強さを発揮して、高い生存率を達成しました*5タイタニックに比べて女が多く死んだのは、男が「ジェンダーの固定概念から解放された結果」なので仕方ありません。「これがあなたの望んだ世界そのもの」です。


Why women and children were saved on the Titanic, but not the Lusitania | Daily Mail Online

映画『タイタニック』では、ディカプリオ演じるジャックが、ローズを生かすために冷たい海に沈みますが、これもジェンダーの固定概念に縛られた結果と言えるでしょう。ジャックとは対照的に、固定概念から自由で、機転を利かせて生き延びたキャルこそ、ジェンダーフリー時代の男の理想像です。*6

しかしながら、ローズや女の観客の多くがキャルよりもジャックを好んだことは、ワトソンの訴えに反して、ジャックの持っていた「男らしさ」を評価する女が多いことを意味します*7。実際、アメリカでも、自分を「フェミニスト」と考える女は23%にとどまっています。


Poll: Few Identify As Feminists, But Most Believe In Equality Of Sexes

結局、人間が動物である以上、「らしさ」を捨てることは自滅につながるということです。平和が望ましいからといって、一方的に軍備を放棄すれば、滅ぼされてしまうことと同じです。

「“男らしさ”で勝てない男はさっさと諦めて楽になれ」という隠れたメッセージを正直に言うと、下のようになるのでしょう。 *8

恋愛弱者という前に、恋愛に欲望を持たなければ敗北感は抱かないですむ。だけど、そうはならないんですね。最近の若者を表現するキーワードで引っかかったのは、「めんどうくさい」です。オタクが「女と付き合うのは、めんどうくさい。それよりギャルゲー(ギャルをひっかけるヴァーチュアルなゲーム)がいい」といったりしますね。

めんどうくさがる男たちが、実際のインタラクションから完全に撤退してくれたら、それはそれでいい。ギャルゲーでヌキながら、性犯罪を犯さずに、平和に滅びていってくれればいい。そうすれば、ノイズ嫌いでめんどうくさがりやの男を、再生産しないですみますから。

ただし、そうなった場合、彼らの老後が不良債権化するかもしれませんね。ところが、彼らが間違って子どもをつくったらたいへんです。子どもって、コントロールできないノイズだから。ノイズ嫌いの親のもとに生まれてきた子どもにとっては受難ですよ。そう考えてみると、少子化はぜんぜんOKだと思います。*9

「自由」や「解放」の美名の下に、「負け組」の男の遺伝子を絶やすことを目論む、ソフトな優生学のように思えてなりません。

 

[追記]

2013年のアメリカの労働災害死亡者約4400人の内訳は、男4100人、女300人でした。この極端な偏り(97:3)は、労働者の職業選択及び雇用者の人員配置にジェンダーバイアスが働いていることを示しています。ジェンダーの固定概念を打破する数値目標として、「女の労災死亡者+1900人」はどうでしょうか。

 

[付録]

ワトソンの「フェミニズム」の限界を指摘した記事。


Sorry, Emma Watson, but HeForShe Is Rotten for Men

But, unfortunately, feminism in its present form has too often ignored sexist biases against males, and sometimes has actively contributed to them. Until that changes, the movement for gender equality will be incomplete.

英国の自殺率は男≫女。どちらの性が不当に扱われているのでしょうか。

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 フェミニストが持ち出す統計に捏造があることを指摘した記事。


Stop That Feminist Viral Statistic Meme | Philip N. Cohen

Why is this thing, which never had many legs to stand on, so pervasive even today, 33 years after it was devised? It has been used by legislators in South Africa, international universities, feminist NGOs, journalists, humanitarians, activists -- and, amazingly, UN organizations such as UNIFEM and UNDP, speaking today in the present tense.

国連機関でも捏造統計が使われ続けているということです。

自分たちが考える「正義」のためなら捏造もOK(目的は手段を正当化する)、というのは朝日新聞と同じです。

*1:性差別が激しい後進国の一部と、制度的には差別が解消した先進国を意図的に混同して誘導しているように思えます。

*2:[引用者注]政治的、経済的既得権益を持たない若者のこと。なお、この発言者は上野千鶴子

*3:強調は引用者、以下同。

*4:人質を取ることの是非は別の話。

*5:男女の生存率はほぼ同じ。

*6:キャルのイメージを悪く描いたキャメロン監督は"sexist"なのでしょう。

*7:ディカプリオ人気を差し引いても、ジャック>キャルでしょう。

*8:バックラッシュ』における上野千鶴子の発言。強調は引用者。

*9:[引用者注]これは“ヘイトスピーチ”に該当するのではないでしょうか。