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日本の家庭はブラック企業?

"Politically correct"を装ったヘイト言論が後を絶ちません。


日本の家庭は最悪のブラック企業!?女性活躍の推進に不可欠な「ダンナ」対策――大和総研調査本部主席研究員 河口真理子|ニュース3面鏡|ダイヤモンド・オンライン 

男性の家庭へのコミットレベルの低さは意識だけの問題ではない。総務省の「平成23年社会生活基本調査 生活時間に関する結果」によると、子どもがいる共働きの夫の家事関連時間は僅か39分、片働き(夫のみ就業)の夫は46分。夫の労働時間は共働き8時間30分、片働き8時間22分である。

総務省『社会生活基本調査』では、人間の活動を三つに分類しています。

  • 1次活動:睡眠,食事など生理的に必要な活動
  • 2次活動:仕事,家事など社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動
  • 3次活動:1次活動,2次活動以外で各人が自由に使える時間における活動

2次活動を仕事等、家事、育児に分けてグラフにします。

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一目瞭然ですが、2次活動の合計時間は夫婦でほとんど差がありません。夫が仕事(稼得)の主担当、妻が家事・育児の主担当でフェアに分業していることが示されます。夫は妻を奴隷のように働かせて長時間寝たり遊んだりしているわけではありません。これを

夫が1割しか家事をしない家庭で妻を外に働きに引っ張り出したら、その家庭は妻にとってブラック企業以外の何ものでもない。

と表現するのは悪質な言い掛かりでしょう。 

立場を代えれば下のようにも言えます。

夫が妻の2倍も外で働いている家庭で夫を家事・育児に引っ張り出したら、その家庭は夫にとってブラック企業以外の何ものでもない。

妻が無業の場合、2次活動時間は夫>妻です。夫と妻の2次活動時間を等しくするためには、「妻を外に働きに引っ張り出」す必要があります。

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しかし、小倉千加子が「勝手に考えたこと」が現実ではないでしょうか。


心理学者・小倉千加子氏「専業主婦こそ“普通”の生き方」 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版

フルタイムもパートも同じ賃金になって、結婚後も全員が「中時間労働」することを女性が望んでいるとは思わない。妻の人生には充電のために中休止が必要であるが、夫には家族のため、世の中のために必死で働いてほしい。夕方から家にいる人を尊敬できるだろうか。

ダイヤモンドの記事に戻ります。

「父親」というステータスの男性のうち、朝の出勤時に子どもが赤い顔して「頭が痛い~」と起きてきて、どきっとした経験がある「父親」はどのくらいいるだろうか?

アメリカでも、子供が病気の時には母親が面倒を見るケースが一般的です。

ノルウェーでも、子供の相手をするのは母親>父親です(下のフィンランドの記事も参照)。


Child care in Norway: An Oslo mom on how working parents manage.

There are more mothers at school events, and mothers are probably home more with sick children, but fathers are very present as well. I would say it’s about 65 percent mothers and 35 percent fathers at a parents’ coffee afternoon in a day care at 3:30 p.m.

その理由ですが、

  1. 一般的に妻よりも夫の稼ぎが多い(→妻が休むほうが損失が少ない)*1
  2. 育児の主担当が母親であることが多い(←霊長類では一般的)

などの合理的なものだと推測されます。

そもそも家庭とは、夫婦が協力して経済的に自立しつつ衣食住を賄う営みであり、その中で子育てというビッグプロジェクトや、家や車を買うなどの経済的プロジェクトも行ういわば「企業体」である。家庭外(社会)で女性の力を発揮してもらいたいのであれば、企業のブラック化を防ぐと同時に、家庭というブラックホール的な企業体のホワイト化を進めるのが不可欠ではないか。

「企業体」のパフォーマンスは、構成員がそれぞれの得意分野に特化(分業)することで高まります。一般的に、家事・育児は妻が主担当、稼得労働は夫が主担当になることがパフォーマンス向上につながります。何でもかんでも半々にすることは、企業体のパフォーマンスを落とす愚策です。分業を否定するのであれば、企業体を形成する意味がありません。

北欧でも男女は事実上役割分担しています。


午後4時に退社? フィンランド人が徹底的に効率よく働く理由とは

北欧は「男女平等」の国とはいえ、女性が男性化することが平等とは捉えられていないので、母親であることを優先する女性は、定刻で帰れる職種を選ぶ。

FacebookのCOOで"Lean In"の著者サンドバーグも、午後5時半には退社して家族と過ごす一見北欧的生活を送っているそうです(その後で仕事)。


Sheryl Sandberg 'does more than her fair share of childcare' | Society | The Guardian

Sandberg, one of the most powerful women in business, who is personally worth more than $1bn, leaves work at 5.30pm to spend time with the couple's two young children, she admits in the book, logging on again after they have gone to bed.

外国の事はさておき、ダイヤモンドの記事では妻よりも長時間労働する夫のことを、妻を酷使するブラック企業呼ばわりしているわけですが、そのようなヘイト言論が建設的とは思えません。

なお、「家事・育児の分担はどうあるべきだと思いますか?」の投票結果は「平等に」が約半数を占めています。当然、「外での仕事の分担も平等に」になるはずですが、これは妻の外での仕事時間を1日+2時間(もちろん、60歳過ぎの定年まで)することを意味します。果たして、それにも賛成するのでしょうか。

 

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*1:女が自分より稼ぐ男と結婚したがる結果。