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出生率1.8への長い道

政府が合計出生率1.8を「まず目指すべき水準」に設定したと報じられています。 

www.sankei.com

1.8とは、1970年代後半~1980年代前半の水準です。2013年は1.43なので、+0.37が必要になります。

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将来の出生率について考える際には、世代ごとの出生率コーホート出生率)が有用です。1950年生まれと1955年生まれでは、45歳時点の累積出生率が約2(1人平均2人を産んだ)ですが、それ以降に生まれた世代で出生率が大きく低下していることが分かります。1975年生まれは最終的に1.4程度にとどまることが予測されます。なお、1961年生まれの49歳時点の累積出生率が1.81です。

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出生率低下の直接的な主因は、晩婚化・非婚化です。女の70%以上が既婚になる年齢は、1985年は27歳でしたが2010年には34歳に上昇しています。90%以上では33歳→50歳です。20代後半の差の拡大が顕著です。

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晩婚化・非婚化は1980年代後半から進んでいますが、これには1986年度施行の男女雇用機会均等法の影響が大きいと考えられます。男女雇用機会均等は女の経済力を高めますが、これが

  • 経済面で男に依存する必要の低下(夫に稼得を任せる代わりに、妻が家事・育児を引き受ける分業システムの弱体化)
  • 結婚相手に求める要求水準の上昇(相手の経済力+家事・育児能力)

を通じて非婚化を促進するためです。(詳しくは[人口・少子化]カテゴリの記事を参照)

安倍政権が推進する「女性が輝く」政策は、むしろ非婚化・少子化促進の逆効果になる可能性も十分あります。

『人口回復』には、出生率1.8を回復する戦略シナリオが提示されていますが、この因果関係をスルーしているため、現実的ではありません。

人口回復 出生率1.8を実現する戦略シナリオ

人口回復 出生率1.8を実現する戦略シナリオ

残念ながら、常識的、あるいは"political correct"な政策では、出生率1.8への道は長そうです。

ヒットラーの社会革命―1933~39年のナチ・ドイツにおける階級とステイ

ヒットラーの社会革命―1933~39年のナチ・ドイツにおける階級とステイ

女性を労働市場から締め出すことが1933年の社会政策プログラムの主要な狙いの一つであった。1933年初めには1150万人の女性がなお就業していたが、これはアメリカ合衆国の2倍――人口のほうは半分しかいないのに――の数だった。男の失業率は29パーセントだったが、女のそれは11パーセントにしかならなかった。結婚資金貸付計画によって、今後の4年間に80万に女性が仕事をやめるだろうと期待され、さらにそれを補足する政府補助金交付によって、20万の男子が家庭用品生産に追加雇用されると見込まれた。「過去の婦人運動は36人の婦人国会議員と数十万のドイツ女性を大都市の路上に狩り出した」と、ある女性の党支持者は書いた。「それは1人の女性を高級官僚にし、数十万の女性を資本主義的経済秩序の賃金奴隷たらしめた。働く権利を奪われている男はいまや約600万もいる。女だけが、安価でいつでも利用できる搾取の対象として、いまなお仕事を見つけることができるのである」。*1

totb.hatenablog.com

*1:強調は引用者