読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

二人のヨーロッパ人の日本分析

Financial Timesのウルフが焦点を外し続ける日本の経済政策について書いています。


日本からユーロ圏への警告:JBpress(日本ビジネスプレス)

第2に、日本は民間部門の消費が少なすぎ、かつ民間部門の貯蓄が多すぎる国なのに、民間部門の貯蓄ではなく消費の方に税を課してしまった。第3に、民間部門の過剰貯蓄をもたらす構造的な要因、すなわち民間非金融法人部門の慢性的な資金余剰(粗利益から投資を差し引いた残り)には手がつけられなかった。

政府が景気を再度落ち込ませることなく財政赤字を減らせるようになるのは、唯一、他部門において収入に対する支出の割合が高まる場合に限られる。具体的には、純輸出が拡大するとか、企業の投資が増えるとか、企業から家計への所得移転が行われて家計の消費が伸びるといったパターンが考えられる。

部門資金過不足は、経済分析において有用です。

高度成長が終わった1970年代半ばには、企業の資金不足が縮小していますが、これは政府の資金不足(財政赤字)と海外の資金不足(経常収支黒字)拡大で相殺されています。

バブル期前には、企業と政府の資金不足の縮小が、海外の資金不足拡大(←円安)で相殺されています。

f:id:prof_nemuro:20141109093109g:plain

1997年時点では、企業は過剰債務と過剰設備の解消途上にあり、金融機関もバランスシートの健全化に動いていました(1998年4月から早期是正措置導入)。経済に収縮力が働いていたところに財政引き締めを加えたために、臨界点を超えてimplosion=金融危機が発生し、日本経済は構造変化してしまったわけです。

f:id:prof_nemuro:20141109000032g:plain

f:id:prof_nemuro:20141109000028g:plain

構造変化とは、企業の防衛的・リスク回避的傾向の強まり(脇田成が言うところの「要塞化」)と資金余剰の定着です。企業の負債のスリム化は、賃金・家計消費の抑制と政府の負債拡大の裏返しでもあります。

f:id:prof_nemuro:20141109104830g:plain

日本は民間部門の構造的な貯蓄過剰という問題に手をつけてこなかった。日銀が死にものぐるいで終わらせようとしているディスインフレ圧力は、こうした誤りによって強化されてきたのだ。

バブル崩壊後、民間部門が負債圧縮を進める過程で財政引き締めを急ぐことの危険性については、先日、IMFの独立評価機関(IEO)が報告しています。

しかし、ラガルド専務理事は「後知恵」と反論しています。


IMF got it wrong on austerity says watchdog - Business News - Business - The Independent

The managing director of the IMF, Christine Lagarde, rejected the thrust of the criticism.

“Considering the information and growth forecasts available in 2010, I strongly believe that advising economies with rapidly rising debt burdens to move toward measured consolidation was the right call to make” she said in a statement. “This assessment is benefiting from hindsight”.

このような認識の人の言うことを真に受けても大丈夫でしょうか。


WRAPUP1-日銀・ECBの緩和姿勢を評価、IMF専務理事「全く適切」 | マネーニュース | 最新経済ニュース | Reuters

ラガルド専務理事は安倍政権に対し、消費税再引き上げのコミットメントを推進するとともに、日本経済における女性の活躍の場を広げるべきとした。

「進歩的」なヨーロッパ人の日本への説教の説得力が失われてきたのは、当のヨーロッパが混迷しているためです。ウルフは日本社会の「強さ」を評価していますが、これはヨーロッパのように大量の移民を受け入れていないためです。移民を受け入れれば、この「強さ」は失われ、ヨーロッパのような混迷が避けられないでしょう。

しかし、ユーロ圏がぜひ覚えておくべきなのは、今回の日銀の取り組みが経済にどのような結果をもたらすかにかかわらず、日本は非常に忠実な市民が暮らす、ちゃんと機能する国であり続けるだろうということだ。ユーロ圏には、そのような強力な優位性はない。

ラガルド専務理事は「女性の活躍の場を広げるべき」とも求めていますが、シンガポールのようになるだけではないでしょうか。

「主義者」(均衡財政、男女均等、etc.)の政策提言を真に受けることには注意が必要です。


「女子の自立天国」シンガポールは日本のモデルになり得るか - Think outside the box


男女分業より格差拡大 - Think outside the box

1997年度の景気後退 - Think outside the box


スミザーズによるアベノミクスの根本的誤りの指摘 - Think outside the box

 

[付録]

 ウルフは

中央銀行が供給する資金は利子が付かず償還もされない政府債務と考えることもできるが、現在の日本国債10年物の利回りは0.5%にも満たない。

と書いていますが、現在、超過準備には0.1%の利息が付いています。

f:id:prof_nemuro:20141109002209g:plain

f:id:prof_nemuro:20141109084658g:plain