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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

少子化対策としての非伝統的家族観

少子化・ジェンダー

イデオロギー少子化対策をミスリードする困った記事です。

www.huffingtonpost.jp

今回のIPSOS調査対象国において日本と同じ経済条件(OECD加盟かつ世界銀行基準において高所得国)の国において出生率が1.5を下回る超低出生率国は日本、ドイツ、ポーランド、韓国であるが、ドイツを除いていずれも各国平均に比べ「良妻賢母好き」国であることがわかる。

「良妻賢母がよい」とは思わないランキング(総合)で2位のスペインと4位のイタリアは、2012年の合計出生率がそれぞれ1.32と1.43の超低出生率国ですが、なぜか無視されています。都合が悪いためでしょうか。*1

先進国においては女性を労働市場に出すことが出生率の上昇につながる、とする説がわが国だけでなく、諸外国においても有力である。*2

因果関係については、イギリス最近の驚異的な出生率の上昇があげられる。子どもの貧困対策として強化された女性の社会進出支援によって、カップルの収入が向上し、その結果として子作りを考えるカップルが増加した、という社会現象が注目されている。

 「驚異的な出生率の上昇」とは、合計出生率が2001年の1.63から2012年には1.94まで上昇したことを指すと思われます(2013年は1.85に低下していますが)。*3

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しかしながら、コーホート出生率の推移を見ると、1972年以降に生まれた世代で下げ止まり・微増に転じているものの、「驚異的な出生率の上昇」からは程遠いことが分かります。出産時期の遅延が一段落してきたことが、合計出生率の上昇として表れているということです(テンポ効果)。

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(グラフの横軸が女の出生年、縦軸が各年齢時点における累積出生率。1973年生まれの場合、25歳0.53→30歳1.00→35歳1.51→40歳1.81)

外国出身者(≒移民)による出産増加も無視できません。その出生率はイギリス人よりも約0.4ポイントも高く、その割合は2013年には26.5%に達しています。

The percentage of births to foreign born-mothers has increased from 12% in 1991 and 16% in 2001 to 25% in 2011. In 2011, the TFR for non-UK born women was estimated to be 2.29 children per woman, compared to 1.90 for women born in the UK.

スウェーデン人が良妻賢母に価値を見出さないのは、スウェーデンが「女と男はまったく同じであるはず・あるべき→専業主婦(夫)の生き方はありえない」というイデオロギーが支配する国だからです。「多様な夫婦のあり方」を認めないイデオロギーの綻びについては、過去記事で取り上げています。

高い出生率に転じた先進国スウェーデンなどをみると「良き母良き妻」が社会的役割と考える女性はわずかに4%である。この結果には筆者も驚いた。ほぼ「そんなのありえないわよ」といわんばかりの結果である。

totb.hatenablog.com

スウェーデンの隣国ノルウェーでも事情は同じです。

www.slate.com

It is very rare that mothers choose to be stay-at-home moms, and many who do feel that they are looked down on. In Oslo, I've never met a stay-at-home mom.*4

「女性活用と少子化対策」の問題は、日本が見習うべきとされているフランスやスウェーデンが、多くの日本人には「家族の崩壊が進んでいる」ように見えることです。現時点では比較的高い出生率を維持できたとしても、将来に思わぬツケが回ってこないとは限りません。

gendai.ismedia.jp

博士: 僕が心配なのは、フランスはそのシステムが始まってまだ短いということです。その子どもたちはちゃんと育っているのかと。

結婚というのは、子どもが大人になって、また子どもを産んで大人になってというサイクルを、きちんと何世代も続けていくシステムの一部なんだと思うんですよ。子どもをつくるのは簡単にできると思うんですけれども、それをきちんと大人まで育て上げるっていう責任はとれるのか。新しいフランスのシステムの心配はそこですよね。

博士: 例えば、社会主義が崩壊したり、あるいは、孤独死が増えたりというのは、新しい社会システムの実験の副作用だと思うんですよ。そういう副作用を見てみないと何とも言えません。

ヨーロッパをモデルにすることに懐疑的にならざるを得ないのは、経済政策で日本を嘲笑・罵倒していたにもかかわらず、「大不況」以降はよく似た停滞状況に陥っていたり、イデオロギーから大量の移民を受け入れたために、「非常に忠実な市民が暮らす、ちゃんと機能する国」でなくなってしまうなど、失敗を続けているためです。

jbpress.ismedia.jp

しかし、ユーロ圏がぜひ覚えておくべきなのは、今回の日銀の取り組みが経済にどのような結果をもたらすかにかかわらず、日本は非常に忠実な市民が暮らす、ちゃんと機能する国であり続けるだろうということだ。ユーロ圏には、そのような強力な優位性はない。

米英金融機関の過度のリスクテイクとバブル経済が、一時は「金融立国」と輝いて見えたように、フランスやスウェーデンの「新しい家族観」も、後になれば「家族と社会の崩壊を加速した」となるかもしれません。もちろん、参考にすることは大切ですが、それを「日本が進むべき道」と早合点することは危険ではないでしょうか。 

totb.hatenablog.com

*1:女の良妻賢母支持率が日本32%<アメリカ35%であることも注目されます。

*2:[引用者注]これはリベラル派のイデオロギー的主張に過ぎません。女を労働市場に出すことが出生率の低下につながった国は多々あります。

*3:イングランドウェールズ。英国全体では1.63→1.92。

*4:強調は引用者。