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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「円安が消費増税のショックを和らげている」の検証

「ロジカルな経済理論を踏まえ」たと称する記事を検証します。


円安が輸出増につながらない本当の理由 | インフレが日本を救う | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

数量ベースでの輸出の伸びは限定的としても、円安によって円換算した輸出金額そして輸出企業の売上高は、2014年になってから増えているのである。それが、4月からの消費増税国内需要が大きく落ち込みながらも、一方で円安によって製造業を中心に企業業績が底上げされそれが賃上げの原資となっている。

つまり、円安が消費増税のショックを和らげている、というのが現実に起きていることである。

急激な円安にもかかわらず、輸出は数量ベースではまったく増えていません。むしろ、内需拡大を反映して輸入が増えています。

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日本の得意分野の機械・電機・自動車のいずれも停滞しています。特に電機はリーマンショック直後の水準です。

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その主な要因としては、

  • 海外生産能力の大幅拡大(⇐現地生産化、輸出入のニュートラル化)
  • 利益と損失の非対称性(円安には円高ほど敏感に反応しない)

が挙げられます。2008年のリーマンショックと2011年の東日本大震災が、この傾向を強めています。

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円安は輸出価格も輸入価格も同時に引き上げています。

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そのため、金額ベースでは輸入増が輸出増を上回り、貿易赤字が拡大しています(足元では横ばいに)。 

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円安は輸入インフレをもたらしています。

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全産業では製造業ほどの賃金増には至っていません(製造業も賞与増が主)。

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そのため、消費税率引き上げ分を除いても、実質賃金は上昇に転じていません。

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これを「円安が消費増税のショックを和らげている」と表現することには無理があるでしょう。

円安は日本経済復活に必要なので、擁護したい気持ちは分かりますが、それだけでは十分ではないことも認識しなければなりません。「一段の円安」よりも、「円安→国内生産・賃金増」の流れを止めた「企業の行動様式の変化*1」への対処が必要な時期ではないでしょうか。


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個別企業にとってみれば、一社だけが賃上げをしても得るものは少ない。企業経営が不安定となっていき、経営者ばかりか、内部で出世するしかない幹部にとっても得策でない。しかしマクロ経済全体ではどうだろうか。家計の所得が上昇すれば、消費支出は増大し、必ず内需は盛り上がる。つまり個別の細かな行動の総和が大きなマクロ的なうねりをもたらすのである。

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*1:スミザーズや脇田成が指摘しています。