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Think outside the box

MAKE JAPAN GREAT AGAIN

「100万人以上の雇用増」の中身

18日の記者会見で、安倍総理大臣は「経済政策において最も重要な指標は雇用と賃金」「政権発足以来、雇用は100万人以上増えた」「経済の好循環が生まれようとしている」と成果を強調していました。そこで、雇用増の中身を見てみます。

2012年12月と2014年9月の季節調整値を比較すると、就業者数は+109万人(男+35万人・女+75万人)、雇用者数は+136万人(男+44万人・女+91万人)となっています。

産業別では下のグラフの通りです。

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就業者数増加の相当部分が、経済政策とは無関係に高齢化に伴って増え続ける医療・福祉セクターで生じていることが分かります。医療・福祉以外の合計が増加に転じたこと(特に製造業)など明るい兆しはあるものの、力強いとまでは言い難い内容です。*1

次のグラフからは、雇用増は正規ではなく非正規、男よりも女が中心であることが分かります。

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女の非正規雇用者数の年齢階級別です。

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 各年齢階級の人口に占める割合です。

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福祉や小売等における主婦層のパートタイム労働の増加」が雇用増の中心と推定できます。*2

ところで、この層の存在は賃金上昇の阻害要因でもあります。

賃上げはなぜ必要か: 日本経済の誤謬 (筑摩選書)

賃上げはなぜ必要か: 日本経済の誤謬 (筑摩選書)

パートタイム労働者やアルバイトは1100万人もいますし、平均年収は低いのでたいへんな比率の低賃金労働者がいると驚かれることもあります。しかしこれらの大半は主婦のパートタイム労働者であり、そこから以下の2つの壁が存在します。

①まず主婦パートは主婦であることから持ち家のある地域から離れられず

②「パート収入103万円の壁」が所得税社会保障面の制度にあること

の2点が企業の買い手独占状況による低賃金状況を支えています

高齢化に伴う需要増が続けば、近い将来にこの層の余剰労働力は枯渇し、賃金上昇が本格化する可能性が高まります*3。もっとも、それが「経済の好循環」を意味するとは限りませんが。


労働力不足に輪をかける後期高齢者の増加 - Think outside the box

 

[追記]

建設業は出来高が増加する一方で就業者数は増加していません。「第二の矢」を追加投入しても大丈夫でしょうか。

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*1:[追記]注:製造業と情報通信業の増加には、2013年1月から派遣労働者の分類が派遣元から派遣先に変更になったことが大きく寄与している。補正して2012年9月と2014年9月を比較すると、就業者純増数の上位は医療,福祉、宿泊業,飲食サービス業、複合サービス事業、公務、卸売業,小売業と主に対人サービスが占める。製造業は微減(ただし、2013年末からは微増)。

*2:これらサービス業の現場労働はパートタイムに適しています。

*3:既に完全雇用に近づいていると推計されています。